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富士の叫び

業種を超えた連携で「食」を支える仕組みづくりを

デフレの悪循環に悩まされていたことが遠い過去に思えるほど、ここにきて様々なコスト上昇による経営の悪化懸念が広がってきた。激しく上昇する原油価格とともに、音もなく進む世界的な構造変化も無視できない。その影響が、我々の命を支える「食」に象徴的に現れている。

燃料ばかりか食用油も、小麦も、農業に欠かせない肥料も値上がり、とうもろこし高騰から配合飼料が上昇と、畜産業界への打撃が心配される。農水省では国民生活への影響について全国各地で説明会を開催し始めたほどである。マグロやカツオはこの1年で1.5倍以上の値上がりで、缶詰やカツオ節業界は苦戦している。

一方で、日本の食料自給率は下がり続けカロリーベースで39%と深刻だ。あるコンビニの定番「和風幕の内弁当」の食材の7割は、外国産に依存し、その食材の輸送距離の合計は、なんと地球4周分に相当する16万キロに及ぶとする調査もある。「和風」も海外に支えられている。

食材が手に入ればまだよい。だが、発展途上国の人口と所得の急増、さらには一年間に日本の耕地面積を上回る農地が砂漠化するなど状況は厳しい。国際市場での「日本の買い負け」が続く魚と同様の争奪戦が他の食材で起きても不思議ではない。

「3、4年の間に食糧危機がくると思う」という惣菜会社社長。国内の生産者のネットワークを考えているという。我が国最大の生活産業である食品産業の大部分を占める中小企業も地産地消運動を一歩進めた調達システムの確立など新たな経営戦略が必要だ。原材料の調達先開発や農水産業と連携した新素材の開発、商品開発まで組合組織での共同化など生産から加工そして流通・消費まで垣根を越えた連携が強く求められよう。

静岡県ではさきに産業部を創設、一次産業から二次、三次産業まで一貫した産業振興策に乗り出した。私ども中央会も食品産業協議会はじめ関連事務局を預かる機関として、業種を超えた連携めざし地方からの挑戦をしてゆく所存である。

静岡県中小企業団体中央会・会長 井上 光一