google

特集

基本方針と策定・運用体制の確立

BCPを策定する上で、まず必要となるのは、企業におけるBCPの基本方針を決定すること。つまり、何を目的に策定し、企業にとってどのような効果があるのかを十分に検討しておくことである。

企業が生き抜くためには、従業員とその家族の生命や健康を守った上で、事業を継続して顧客の信用を守り、売上げを維持する必要がある。事業と売上が確保できれば、従業員の雇用も守ることができる。同時に地域経済の活力を守ることにもつながる。

BCPでは、それを策定・運用する体制も重要な要素のひとつだ。BCPの策定・運用は重要な経営課題であり、経営者のリーダーシップが不可欠となる。したがって経営者が率先して策定・運用推進にあたるとともに、各事業部門の代表者の参画など、企業規模や業務の役割分担に応じた人選も必要である。

緊急時の事業継続には取引先企業や協力企業との連携も欠かせない。あらかじめ取引先と中核事業や目標復旧時間などについて認識を共通化し、緊急時のための連携方法などを検討しておくことも効果的だ。

BCPサイクルと策定のポイント

策定・運用体制を確立した上で

(1)事業を理解する

(2)BCPの準備、事前対策を検討する

(3)BCPを作成する

(4)BCP文化を定着させる

(5)BCPの診断、維持・更新を行う

の五つのプロセスから成るBCPサイクルを日常的に回転させていくことが運営上、大きなポイントとなる。BCPサイクルと策定のポイント

 (1)事業を理解する

中核事業を特定する

自社の「中核事業」、すなわち「企業の存亡に関る最も重要性(または緊急性)の高い事業」を財務面、顧客関係面、社会的要求面などから総合的に特定する。あわせて中核事業を復旧させる目標復旧時間の目安を中核事業に関る顧客ニーズや自社を取り巻く市場環境等を考慮して設定する。復旧の目標時間を設定することで、復旧時に適切なスケジュールで行動することが可能となる。

重要業務・資源を把握する

受注、在庫管理、出荷、配送、支払い、決済など中核業務を構成する業務やこれら業務の遂行に不可欠な経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)を整理する。

中核事業が受ける被害を予測する

自社の中核事業が地震、風水害、火災等の災害によりどの程度の影響を受けるのかを予測する。そのためには中核事業継続に必要な資源がどのような災害によって、どの程度の影響を受け、中核事業の継続にどの程度支障をきたすのかを検討する。

財務状況を分析する

自社が地震等により被災した場合、建物・設備の復旧費用や事業中断による損失を具体的に概算し、状況によっては、一カ月程度の操業停止に耐え得る資金の事前確保、適切な損害保険の加入、事前の対策実施等被害を軽減するための事前対策を採るべきかを判断する。

(2)BCPの準備、事前対策を検討する

事業継続のための代替資源の目途立て

中核事業の継続に必要な資源が、被災していなければ問題ないが、利用できなくなった場合は、以下のような資源の代替を確保する手段を検討する。

  • 情報連絡の拠点となる場所
  • 事業復旧を実施するための場所
  • 臨時要員・資金調達、通信手段
  • 電力、ガス、水道等各種インフラ
  • ソフトウェア(バックアップの方針)
事前対策を検討・実施する

ここまでの分析で得られた結果に基づき、目標復旧時間内に事業復旧するための事前対策を検討する。多額の費用が発生するハードウェア対策については、短期間では十分な資金を調達することが困難なので、中長期的な整備計画を策定する。

また、事業所建屋の耐震化や防災に資する設備導入等、ハード面の事前対策のための融資制度が整備されているので、これらも効果的に活用する