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シリーズ「くみあい百景」

“駿河湾桜えび”“由比桜えび”
  地域ブランド商標で差別化を推進

由比町桜海老商工業協同組合

住所:〒421-3111
庵原郡由比町今宿1072番地の3
理事長:安部亥太郎
組合員:42人
設立:昭和40年3月
TEL:054-375-5015
FAX:054-375-3331
URL  http://power-dream.com/sakuraebi/

 

春を告げる“桜えびの天日干し”

春と秋、桜えびの「天日干し」でピンク色に覆われる富士川河口の河川敷。

春の訪れとともに、富士川河口の河川敷は、一面鮮やかなピンク色で覆いつくされる。富士山を背景に、桜の花が満開であるかのような光景は、圧巻である。これは日本で唯一、駿河湾で水揚げされる「桜えび」の素干し加工の様子である。

桜えびは、体長4〜5センチメートル、透明で美しい桜色をしていることから、その名前がついた。駿河湾で漁獲されるようになったのは、明治27年頃といわれている。現在は資源保護のため、春と秋、年2回の漁期が定められている。

桜えびには、牛乳の約7倍のカルシウムが含まれているほか、コレステロールや、動脈硬化の予防に効果のある成分も、多く含まれている。グルメブーム、消費者の健康志向の高まりを背景に、ここ数年、テレビや雑誌で取り上げられる機会も増えてきた。

組織の力で積極的な事業展開

「いつまでも安心で安全な桜えびを届けたい」と安部亥太郎理事長。

本県を代表する特産品のひとつである桜えびは、天日による「素干し加工」のほか、「煮干し」、「釜揚げ」、「生鮮品」として、全国各地へ販売されている。

昭和40年、こうした桜えびの加工・販売を行う事業者が結束し、設立されたのが当組合である。

「組合を設立した当時は、高度経済成長のさなか、スーパーマーケットなど、量販店向けの流通が中心になりつつあった。組合員は、低価格化・量産化・均一化などへの対応を迫られており、そのためには、どうしても設備の近代化が必要であった。法人化したことで、信用力が増すなど金融面の効果や、共同購入によるコスト低減が実現でき、組合員の生産性は一段と向上することができた」と安部亥太郎理事長は、設立の効果を語る。

組合が設立され、既に40年を超える歴史を刻んだ。その間、組合は組織の力を遺憾なく発揮することにより、数々の事業活動を展開してきた。

昭和56年、富士川河川敷に、桜えびの「共同干し場」を設置したことは、懸命な努力を積み重ねた成果である。桜えびは、天日干しすることで、一度に、むらなく、短時間で、「素干し」に仕上げることができる。太陽にさらすことで、栄養効果も期待できる。これまでは、地元の海岸を干し場として使用してきたが、由比の地すべり対策事業や、国道1号線バイパス建設の影響で、海岸は埋め立てられ使用できなくなった。

「干し場の消滅は、加工業者にとって死活問題。由比漁協、蒲原の加工組合と歩調を合わせ、建設省など関係先に日参し陳情を行った。こうした活動が功を奏し、河川敷使用許可を取りつけることができた。天日干しにより、消費者に、安心で、艶・味の良い桜えびを届けることができていると強く感じている」。理事長はしみじみと語る。

商標登録による地域ブランドづくり

行列ができる超人気店。由比漁協直営「浜のかきあげや」のかきあげ丼。

平成18年、地域産業の競争力強化を目的に「商標法の一部を改正する法律」が施行された。

これまでの商標法では、「地域名」と「商品名」からなる商標登録は、全国的な周知性が必要であるなどの理由から、容易に登録を行うことができなかった。

しかし、この法改正で、協同組合などによって使用されたことにより、隣接都道府県に及ぶ程度の周知性を獲得すれば、「地域団体商標」として登録することができるようになった。組合は、早速、この制度を利用し、蒲原、大井川町の加工組合と「駿河湾桜えび」、由比漁協と「由比桜えび」の商標登録を共同で行った。

「駿河湾産桜えびの認知度は、あがってきたが、まだまだ充分でない。台湾産や類似品も出回っており、地域ブランド名を商品に付すことにより、差別化を図っていきたい」。理事長は、地域団体商標取得の意義を強く語る。

静岡県内では、現在、7の「地域団体商標」が登録査定されている。

「地域団体商標として、商標登録を行うことが目的ではない。品質基準をつくることで、駿河湾ブランドとして、自信と誇りを持ち、安全で安心な桜えびを供給し続けていくことが大事である。そのためには、組合が中心となり、組合員に対して、安全面や品質面で、適切な指導や情報提供を行っていきたいと考えている」と理事長は、その責任の重さを力説する。

今年の夏、組合では、商標登録を記念して、” 桜えびの写真コンテスト“を実施する。

「桜えびを題材とした写真は意外と少ない。後世に、桜えびの良さを伝えていくためには、そうした試みも大切なことです」。理事長の桜えびに対する情熱は、どの夏よりも熱く感じた。