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富士の叫び

成長力底上げ支援の実効性を

中小企業の役割に期待が高まっている。

政府は、大企業と中小企業、中央と地方などの間でみられる所得や生活水準の格差の固定化を防ごうと「成長力底上げ戦略」を打ち出した。構想では、経済成長を下支えする人材の育成や就業支援とともに中小企業の生産性の向上を戦略の柱に掲げ、官民あげて様々な対策に取り組むとしている。

さきに官邸主導で開かれた、政府・労働界・使用者の「中央円卓会議」に続いて、6月をめどに各都道府県に「地方円卓会議」を設け、3カ年計画で成長力底上げを実現させたい意向だ。

確かに、企業数の9割、従業者数の7割をこえる中小企業の成長なくして格差解消は望めないことは明らかで、中小企業支援の視点は歓迎したい。

だが、今回の戦略では、この国会で最低賃金法を改正し、生活保護費を下回る現状の最賃額を大幅に引き上げる道筋を付けることで、中小企業の賃金底上げをも視野に入れている。野党の中には、最賃の全国平均を時間給1000円に引き上げる動きもあるようだが、静岡県の現在の地域別最賃は682円であり、実現された場合の影響は大きい。

さらに「中小企業の生産性向上の努力もコスト削減圧力に吸収され、賃上げにつながらないのではないか」、「大手の優越的取引による問題を解消すべきだ」、「元請・下請ともに生産性向上による利益を分け合ったらどうか」など、中央円卓会議でも、具体的な話題が上がったようだ。

もとより中小企業は生産性の向上努力を絶え間なく続けてきたし、人材確保のための賃金改善の必要性も理解している。その対策として協同組織による仕入れ・加工・販売に加え労務・人材教育など経営の各要素の共同化や工場・店舗などの集団化によるインフラ・環境整備活動もすすめている。

我々は、結果的に賃金の上昇圧力だけが増し、中小企業を苦しめることのないよう、まずは新たな生産性向上に向けた明確かつ具体的な政策の実現を求める。それを通じ中小企業は、地域振興や雇用への期待に一層応えることができるのである。

静岡県中小企業団体中央会・会長井上 光一