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視点・指導員の現場から

激変する雇用環境
中小企業の打つ手は?

中央会は平成16年度から5年間、静岡労働局より委託を受けて「静岡県西部地域求職活動援助事業」を実施している。

私は昨年度までの2年間、その実務を担当させていただいた。当事業は、「地域雇用開発促進法」に基づいて、地域雇用の活性化と「企業が望む人材の育成」、すなわち雇用のミスマッチの解消をめざすものである。

事業では、求人情報の開拓や求人情報の受発信を目的としたインターネット求人情報サイト「TRY&GET(www.tryandget.jp)」の運営、営業職・福祉職向けの職業講習、就職面接会の開催、求職者の就職カウンセリングなどを行っている。

雇用の現場では

最近でこそ静岡県、特に県西部地域では、求人倍率も1倍を超え、学生の内定率もバブル期をしのぐ勢いであり、景気回復の判断材料として雇用状況の改善が挙げられている。しかし実際の雇用の現場では、定年延長への対応や団塊世代の大量定年退職、若年者のニート問題、派遣労働者の増加をはじめとした雇用形態の多様化など課題が山積している。こうした中で私自身、2年間で1000社近い企業を巡回し、経営者や人事担当者から、採用に関する数々のご苦労を伺った。中でも、ある企業の担当者がおっしゃった「採用は博打みたいなもの。当たれば儲けもの。」との、あきらめに似た一言が今でも印象に残っている。

変化への対応〜企業の進化〜

一方で、採用がうまくいっている企業もあり、その特徴について考えてみた。分かりやすい例では、まず雇用条件が良いこと。給料が高くて、休みが多い。そうすれば、自然と優秀な人材が集まり定着率も高くなる。では、どうしたら雇用条件を良くできるのか?ある企業の工場では、工場長自らが、電話番、経理、弁当の注文からお茶出しまでこなしていた。曰く「事務員1人の給料を、従業員に分配するため」とか。単純なことであるが、人件費の見直し効果は大きい。次に、従業員を大切にすること。ある製造業では、珍しく毎週日曜日、水曜日が定休日である。当企業の従業員は、高齢者が多く、病院や役所に行く機会が多い。そこで、土曜日休みではなく、平日休みにした。従業員の評判も良く、技術的信頼から取引先の理解も得ているとのことだ。このように、雇用環境への変化には、企業自体も柔軟に《進化》していかなくてはならないようだ。人材が集まらないと嘆くより、集まりやすい環境を整えることだ。せっかく採用した人材ならば、運だといって見捨てないで、育てる努力ももう少し必要なのかもしれない。

中央会では、求職活動支援事業だけでなく、学生の職場体験・ジュニアインターンシップや、仕事と家庭の両立を目指すファミリーフレンドリー等も推進している。それらは、見方を誤れば求職者に対する過保護な支援になってしまう恐れもあることも忘れてはならないと思う。今後は、巡回で得た雇用の現状を忘れずに、私自身も進化していきたい。

(押尾)