特 集 
 多士済済 
 視 点 
 編集室便り 



 指導員の現場から
 組合の異分野進出
 秘訣は地域密着の実践にあり 



「ちょっと直してよ」がきっかけ

 公共事業など行政の予算も縮小傾向にある中、新規事業の開拓に向けて研究を行おうという組合の活路開拓事業委員会に参加する機会をいただいた。
 本誌一月号のくみあい百景に紹介された、旧小笠町の建築事業者を組合員とする(協)小笠総合住建である。地元業者で対応することが望ましい幼稚園や小学校遊具のメンテナンス業務の共同受注に着目したことが、まずもって賞賛に値することだと思った。メンテナンス専門の業者でないとやりたがらず、やってもあまり儲からない仕事であるからだ。
 新規事業のきっかけの一つには、幼稚園や小学校に補修工事を請け負った組合員が、その工事以外に「ちょっとここを直してよ」「ついでにここも」との声に気軽に応じていたとの事だった。請け負った業者には、子供や孫が通っている学校であるためついついサービスをしてしまうことも。このような、その地域ならではの関係が築かれていた。


時代の流れに乗る

 新規事業に取り組もうとしたとき、組合員のこうした実績に加え、社会環境・時代の流れに乗ることで、コトはうまく進むのだなあと実感した。
 同組合が平成十六年三月に活路開拓事業の申請をした時期は、まだ社会背景として、遊具による事故があまり取り上げられていなかった。しかし、事業を実施してから県内でも遊具による事故の記事を目にするようになった。また、小学校に外部者が校舎内に侵入し生徒に危害を加えた事件なども発生し、学校の管理体制が強化され、構内への出入りにも監視の目が厳しくなってきた。
 組合員も今までのように個々がばらばらの格好で作業をすることをやめ、組合の統一した上着、ヘルメットの着用で作業をするようになった。
 学校管理者からのアンケートによると、遊具の安全性などには関心が高いが、マニュアル的に管理者の点検は行っていないことも判明した。そこで簡単な目視の点検など、作業の際に管理者に同行してもらうなどの対応をとった。
 これにより組合の点検業者が、遊具の安全点検の講師として学校側に受け入れられることで、さらなる信頼を得ることとなった。
 各業者が取り組んでいた実績に、組合で行うことによる信頼、これまでの奉仕に近い作業を仕事として受注できたことなど、まさに組合員あっての組合、組合あっての組合員という関係が構築された。
 今、組合では小規模ながらも、学校からの補修工事の見積り依頼を多く頂いているという。小回りがきく、細かな配慮ができる地域密着型の当組合に対する高い評価の現れである。
 活路開拓事業委員会の専門家から得た@地域密着型の業務は普段の生活や仕事ぶり、車の運転まで回りの人達が見ているので思わぬところから苦情、風評が伝わる点に気をつけること A点検業務を確実に行うことが本業に結びつくという二つの助言を忘れずにいようと思う。

(近藤)



中小企業静岡(2006年3月号No.628)