特 集 
 多士済済 
 視 点 
 編集室便り 




利益追求と企業倫理

 年明けから景気の回復基調が俄かに実感を帯びはじめ、株式市況も強気の値動きを見せている。
そうした中、ライブドアの証券取引法違反事件が発生し、堀江貴文元社長以下三人の幹部が時を移さず逮捕された。
 思い返せば一昨年はプロ野球界への進出、昨年は放送局の株買占めや衆議院選挙への出馬。さらには「想定内」が流行語大賞をとるなど、ホリエモンの愛称でもてはやされた経営者の終焉はあまりにもあっけなかった。
 市場主義一辺倒、儲けることが勝ち組の証 ―バーチャルのマネーゲームを思わせる堀江氏の経営手法は、何をしても構わないという世の風潮をさらに増長させた感が強い。時を前後して露見した違法建築や米国産輸入牛肉問題などもしかり、同様の根っ子を抱えていると思えてならない。こうした風潮に対する潜在的な世論の反発もあってか、手段を選ばずに成り上がり、稼いだもの勝ちという時代の“象徴”に対する捜査当局の追及は、素早く手厳しいものだったといえる。
 たしかに小泉内閣が唱える構造改革は、国際社会の激しい変化の中で必要不可欠であることは論をまたない。また、効率化・改革を旗印にすれば全てが清新、かつ社会正義であるかのような錯覚さえも植えつける。しかし、市場は決して野放図な自由放任であってはならない。錦の御旗を振りかざすがごとく、安易に現状打破を取り沙汰する風潮のみが先行すれば、今回のような歪んだ副産物を生み落とす結果となる。
 小泉劇場は必ず終わりがある。しかし日本という国はそれで終わるわけではなく、構造改革の途上で露呈したツケは未来永劫払っていかなければならない。今後、同じような轍を踏まないためには、経済活動に関わる全てが社会的責任(CSR)を自覚し、実践することが何より重要である。
 新年度を直前に控えたいま、我々、中小企業経営者も利益追求と企業倫理を見つめ直す良い機会にしたいものである。

静岡県中小企業団体中央会・会長 



中小企業静岡(2006年3月号No.628)