特 集 
 多士済済 
 視 点 
 編集室便り 




 姉歯建築設計事務所による耐震強度偽装問題が、マンションなどの建物への不信や不安を全国的に高めている。県内随一の陣容を誇る設計集団である企業組合針谷建築事務所のトップ、高田雅司理事長は今回の問題をどうとらえているのか?
「まったく想定外の事件でコメントも難しい」と驚きを隠さないが、
「一言でいえば倫理観の欠如が背景にある。人の命や財産を守る空間が建築であるが、こうした基本部分がないがしろにされたのは残念」と心境を吐露する。
 続けて、「マンション建設など業者間の関係、すなわち設計・施工・建築主の三者は本来なら対等であるはず。なのに、特異な構図に陥り非対等な立場におかれ、姉歯氏個人が相手に迎合してしまった」と切り捨てた。
 設計業界における信頼回復に向けた組合の対応について、
「今までと変わらない。リスク管理はISO19001で、品質管理や記録管理を徹底しているし、設計も分業化されデザイン・構造計算・空調・電気設備の各専門家を揃え、各自が対等で業務をこなしている。手抜き? ありえない、信頼も揺らがない」。
 ただし、設計監理業務が欧米諸国と比べ、市民に理解されていない問題もある。「そのための啓発活動は組合として今後の課題です」。


「手抜き、ありえない」 
“針谷ブランド”で躍進続ける 
     クローズアップインタビュー 
企業組合針谷建築事務所 
理事長 
高田 雅司 氏 

 理事長就任は、バブル崩壊で日本経済がどん底といわれた平成十一年。
不景気による企業の投資意欲の減退や金融機関の貸し渋りなどを背景に、
建築設計業務も減少していた。理事長として真っ先に着手したのは、頑張った組合員に対し、給与できちっと評価するシステムを定着させた点だ。「厳しいときだけに、組合員のモラール向上が最重要」と敢行した。
 こうした改革もあり、組合の業績は逆風の中にも関わらず売上実績をわずかながらも増やしている。
「組合員も職員もよく頑張っている。公共工事の大幅な減少など全体の建築物件が減る中で、受注件数を数多くこなしている証拠だ」。
 組合トップとして、外の世界に触れるにしたがい”針谷ブランド“の大きさを実感。「施主・設計・施工の三者の対等性が約束されている組織だが、個人ではその保証はない。それに、針谷の名で自分が関わった公共建築物が残る。これも魅力です」。
 現在、静岡市のサッカー協会の副理事長。大学時代に立ち上げたサッカー同好会が、いまでは静岡市社会人リーグ育成の責任者としてライフワークとなった。また海釣り、川釣りのほか四十代で始めたゴルフなど、趣味は多彩だ。




中小企業静岡(2006年2月号No.627)