特 集 
 多士済済 
 視 点 
 編集室便り 




技能五輪国際大会で
「ものづくり」への動機付けを

 少し前の話になるが、昨年十一月二六日、二年余りの旅を経て地球から三億キロ離れた小惑星「イトカワ」に、惑星探査機「はやぶさ」が見事着陸を果たしたとのニュースが流れた。
 「はやぶさ」は、日本が設計・製作した衛星で、今回、初めて月以外の天体に舞い降り、離陸するなど、人類初の偉業を次々と成功に導いた。その技術的な裏づけとして、日本が得意とするロボット技術、特にセンサ技術や自律制御技術の優秀さがあげられる。これら先端技術を支えたのは、中小工場が持つ小型軽量の精密部品や微細加工のものづくり技術であり、中小企業の保有技術が宇宙開発の先端分野においても不可欠な存在であることを証明してみせた。
 ところで、産業界では技術・技能伝承の必要性を指摘する声が年々高まりをみせている。空洞化の進展や技術者の高齢化、若者の製造業離れなどが原因で、日本のお家芸とされた“技”の承継がスムースに行われ難い状況にあるからだ。特に、ここにきて団塊の世代が退職期を迎える二○○七年問題がさらに拍車をかけることになりそうである。しかしながら、技術・技能の習得は一朝一夕にはいかない。したがって、青少年期からものづくりや技術への興味を養う環境づくりを進めていくべきで、それこそが日本経済の浮沈を左右する重要な鍵を握るといっても過言ではない。
 おりしも来年十一月、本県において第三九回技能五輪国際大会が行われる。この大会の特徴は、各国・各地域の予選会を勝ち抜いた二二歳以下の青年技能者が一堂に会し、職業訓練の成果を実証するため世界の頂点を競い合うことにある。
 こうした絶好の機会を逃す手はない。世界レベルの技術や技能の醍醐味に触れるためにも、行政関係者には、県内はじめ全国の中学生・高校生などに可能な限りの参加・見学を呼びかけていただきたいものだ。こうした経験が、多くの若者にとって「ものづくり」という職業に対する動機付けとなることを強く期待している。

静岡県中小企業団体中央会・会長 



中小企業静岡(2006年2月号No.627)