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 編集室便り 



 指導員の現場から
守ろうかけがえのない命
企業の防災対策に本腰を!




事前対策と避難誘導マップ

 昨年の新潟県中越地震、続くインドネシア・スマトラ沖地震の予想を超える被害は、近年にない痛ましい歴史を刻むことになった。
 「東海地震が起きる」と言われて久しい。
 昨年秋の紀伊半島沖での地震に端を発した東海・東南海・南海地震の同時発生の懸念を初め、マスコミによる最近の地震関連の報道を見ると、いよいよその時が来るのかな、と考えたりもする。
 しかし、「災害は忘れた頃にやってくる」という言葉の通り、あと数ヶ月もすると、私たちの防災意識は以前のレベルに戻ってしまうのかもしれない。
 今年度、富士市浮島工業団地協同組合は、活路開拓ビジョン調査研究事業を活用し、団地内の防災管理システムの構築に取り組んだ。その結果、組合員企業と組合事務局それぞれの事前防災対策を築くとともに、団地内防災組織を立ち上げ、避難誘導マップを作成した。    今後も団地内一斉の防災訓練を初め、各種の防災用備品の配備、建物の耐震化など、防災対策の具体化に取り組んでいく考えだ。
 今回、この事業に携わり、一番大事だと感じたのは、「とにかく災害で死なないこと。自らの命は自らで守る」という基本である。
 それぞれの企業には多くの従業員が勤務し、汗を流している。彼らは、企業にとって貴重な戦力であるとともに、家族にとってはかけがえのない存在であり、地域活動の重要な担い手でもある。従って、大地震発生に関する観測状況が出されたら、従業員を速やかに帰宅させるなどの体制を社内に築いたり、地震が突然発生しても怪我などを負わないように、建物の耐震化や戸棚を固定するなどの企業内防災対策を、早急に講じる必要があることを痛感している。

被害拡大の原因とならない

 また、社会的に見ても、企業の防災対策は益々強い責任を帯びている。それは「大規模災害時には地域での共助が必要であり、企業はその一員である」「経営資源を有している企業の力は、いざという時に頼りになる」「企業の存続は、顧客、地域住民、従業員を含めた地域なくしては成り立たない」という観点からである。
 こうした中で、企業に求められる防災上の役割がいくつかある。まず一つは「自らが加害者にならない」ことである。そのためには、防災マニュアルや防災機器を整備する必要がある。また被害拡大の原因とならないよう危険物の厳重な管理や工場等の防火対策も必要だ。次に「万一、発災したら被害の拡大防止に努める」ことである。そのために、避難誘導、生き埋め者等の救助、初期消火活動など、二次災害の防止のための訓練を日頃から積んでおく必要がある。そして「自社の事業継続と被災地域への支援」である。
 防災対策は利益に結びつかない、という声も耳にします。しかし、防災対策は防犯対策にも相通ずるものがあります。備えがあれば憂いもありません。ぜひこの機会にあなたの会社の防災対策を見直してみませんか。

(中村)



中小企業静岡(2005年4月号No.617)