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視点・指導員の現場から

労働問題に入り混じる多様な視点

辛辣な表現で人生を斜めから見た詩人「相田みつを」さんの詩が好きだ。

一番のお気に入りは、「他人の物指し自分のものさしそれぞれ寸法がちがうんだな」である。

毎朝、味わいのある書体で日めくりに書かれた詩を眺め、一人その言葉の奥にあるものを考える。

子供の頃から、「ヘソ曲がり」といわれた私。相田さんの作品と比べては、大変に失礼だが、どこか似ている所もあるような気がする。親や周りが、右といえば左を向き、数々の失敗を重ね、ここまで生きてきた。

価値観の違い

総務省が昨年の完全失業率の平均を発表したが、4年連続で改善を示した。これは、景気の回復を背景に製造業やサービス業を中心に、就業者が着実に増えた為。ただ、12月の失業率は、より条件の良い仕事を求めて離職者が増え、11月を上回ったとのことだ。

良い求人があると、そちらに目が向き、新たな離職者が増え、失業率が下がり難いと解説している。就職しても、スキルアップのためとか離職せざるを得ない特別な事情もないのに、我慢もなしに安易な職場を求め次々と職業を変わる若者。それを黙認する大人も多い。

大人といえば、最近「義務教育だから給食費を払う必要はない」と言う方がいた。生来の「へそ曲がり」もこの考えには…、「他人の物指し」との違いを痛感した。ただし世の中、一人で生きているわけではない。社会の一員として、各々が果たす役割がある。考え方を示す事と、役目を拒むことは違うのではないか。様々な価値観を持つ人々が共に生きる為、冒頭紹介した二本の「物指し」の他、もう一本「社会の物指し」もあるような気がする。

大切な基本と経験

最近、県下の中小企業経営者の皆様から、貴重なご意見を聞く機会があった。

人材育成の質問に対し、一部には、技術人としての育成以前に「人間教育」が必要。少なくとも「躾」により、「整理・整頓・清潔・清掃」を身に付けておくことを求めている、と。更に、職人の持つ「技」の伝承に、大きな不安があるとの回答が数多くあった。

熟練者の再雇用が効果的

雇用情勢は数字が示すように、改善されている。

その中で、「団塊の世代」の大量退職を背景に、各企業の採用意欲は高く、優れた人材の確保は益々困難になる。大量に退職者がでても、特に経験が必要な技術部門では、新規の採用が難しい。こうした厳しい雇用情勢に、企業が対処する為の有効な手段の一つが、「団塊の世代の再雇用」だ。就業の形態も定年制の延長からパート、都合の良い日だけの勤務と、雇う側も雇われる側も様々な選択が可能である。熟練者が、同じ職場に働くことで、貴重な技術の伝承ができる。さらに、社会の一員として生きる為に必要な、私が思う「社会の物指し」も若い人の身に付くのではないか。

これからは「3本の物指し」を上手に使い、中小企業の快適な職場環境づくり、そのための経営者負担をいかに減らせるか。広い視野に立ち、様々な角度から労働環境の改善や助成制度の普及に努めたい。(府)