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富士の叫び

表彰式典に思う

先月、県の予算案や新体制案が発表され議会での審議が始まった。随所で新年度に向けての取り組み内容が報告されている。多くの企業人にとっても、この3月期は年間事業の総決算と新たな年度へ向け構想を具体化し、また組織体制を整えるための大変重要な時期である。

いま、我々中小企業を取り巻く経営環境、なかでも労働環境は刻々と変化している。団塊の世代の大量退職は、技術力の低下や絶対的な労働力不足を招き、少子・高齢化の進展と併せて若年労働者の確保に向けた競争激化は止みそうもない。また、フリーターやニートとよばれる若者の増加や“七・五・三”と揶揄される若年新規採用者の定着率の悪さも、大きな懸念材料となっている。

2月6日、中央会の主要行事のひとつである表彰式典が、多くの来賓に見守られるなか厳かに開催された。当日は組合功労者や優良組合、永年勤続従業員など230人と6組合が受賞。なかでも永年勤続表彰は、同じ会社に15年以上勤務する職務精励者に対する表彰で、その栄誉は受賞者のみならず、労働環境の改善、向上に腐心されている経営者に対しても与えられるものである。

中小企業にとって、従業員の定着率向上はまさに会社の存亡に直結するものだ。「若年者の定着率が良い企業ほど業績が伸びている」という調査結果も公表されているが、何よりも重視すべきは、魅力ある企業風土も企業倫理もそれなくして醸成しないという点である。ヒトは誰しも、自身の能力が存分に発揮でき、顧客に喜んでもらえることにやりがいを感じるものである。経営者は外に向かって顧客満足を第一に唱えるのは当然だが、内では自社を支える従業員を正当に評価し、いきいきと働ける環境づくりに傾注しなければならない。 そうした日々の積み重ねが風土となる。

問題は、その評価をどうするかである。数字優先の能力・成果主義は、確かに合理性を持つが万能ではない。近年、続発する企業の不祥事をみるにつけ、顧客にウソをつかないことや喜ばれることなど、数字として表れにくい部分にもっと目を向けるべきではないだろうか。

静岡県中小企業団体中央会・会長 井上 光一