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富士の叫び

危機管理へ強い当事者意識を

7月5日、北朝鮮による突然の弾道ミサイル発射は日本全土を騒然とさせた。過熱とも思えるマスコミの論議はさておいても、従前より欧米に比べ「危機管理後進国」といわれるわが国の体制を見直す大きな契機となったのは間違いない。

ときあたかも終戦記念日を迎えるにあたり、あの焼け野原と化した静岡のまちに立ったときのことを思うと、政府に対しては、危機管理意識に立脚した毅然たる態度と慎重な対応を切に望むものである。

ところで、一口に危機管理といっても国防問題から、地震や水害に対する防災、鳥インフルエンザ、BSE対策などの防疫、コンピュータウィルス対策、商品の品質管理に至るまで、あらゆる分野に話は及ぶ。巨視的に見れば、我われの健康問題もそのひとつに挙げられよう。このほど厚生労働省から、「メタボリックシンドローム」なる健康管理の目安がだされた。これによれば、内臓脂肪型肥満により、一気に国民2千万人が生活習慣病の予備軍になるという憂慮すべき事態にわが国は立たされている。これなども、食生活の乱れや運動不足など、日頃からの危機管理欠如の現われであろう。

目を産業界に転じると、トヨタの26万台ものリコール問題、パロマのガス瞬間湯沸かし器で起きた一連の事故などは、危機管理意識からかけ離れた残念な対応と言わざるを得ない。メーカーブランドは、創業から多くの先達によって積み重ねられ、国際社会の中で日本ブランドとして受け入れられ、その地位を確立したものである。見方をかえれば、製造・販売・管理の現場で企業の危機管理意識が末端に至るまで浸透していたならば、屋台骨を揺るがすような事態は起こらなかったのではあるまいか。

危機管理は、あらゆる角度から人為的ミスを払拭することが基本となるが、その前提として自身の命や財産を守るための強い当事者意識が一人ひとりに求められている。

こうした認識にたち、経営者は自然災害対策も含めた総合的な危機管理に関する行動規範を示し、自ら率先してその推進に当たってほしいものである。

静岡県中小企業団体中央会・会長 井上 光一