新たな施設管理システムの構築を
「環境の世紀」と呼ばれる21世紀が始まり6年。かつて対立する関係にあると考えられてきた企業活動と環境だが、今や企業にとって環境問題への対応は、避けて通ることのできない重要な課題となった。
特に建設業界では、従来までの建物をつくり、壊すという「スクラップ・アンド・ビルド」の思考から、資源有効活用の観点に立ち、建物のライフサイクルに沿った計画的な維持管理や長期保全へと、その対応は大きく変化している。
こうした流れをいち早く捉え、事業化を進めるのが当組合だ。その大木幸雄理事長と相坂幸彦専務理事は、浜松市内の建築士で構成される浜松建築設計監理協同組合の理事長と専務理事をも務める。
「建物を簡単に壊して立て替える、という時代は終わりました。アメリカでは、建築物を長く使い続けるため、定期的な診断やその診断に基づく長期修繕計画をつくり、最低限の改修や修繕を行う、という考えが完全に定着しています。しかし、わが国ではこうした考え方が浸透し始めてまだわずか」と大木理事長はいう。
当組合は、建築設計監理協同組合のほか、土木工事、ビルメンテナンス、造園工事、消防設備工事、金属製建具工事、塗装工事、不動産管理、解体工事など、建物に関連する9業者により平成13年に設立された。
各種のエキスパートを揃えた組合が扱う建物は、マンション、事務所、店舗、一般住宅と幅広く、その業務内容も施設設置計画の策定、施設管理サービス、コンサルティング、環境測定、衛生管理、設備機器の保守・点検、清掃と多岐にわたる。
「これら建物管理にかかる生涯コストは、建設費用の5倍から7倍が相場。従来まで分業的に実施されてきた建築計画、設計、施工、維持管理、改修、解体、リニューアルなど、建物の誕生から再生に至るまでの工程を組合で受注し、一元管理することで、ランニングコストの軽減や統一的で効率的な建物管理を図ることが可能となります。いわば建物の『ゆりかごから墓場まで』一貫して組合で面倒をみることができます」と相坂専務理事は組合のメリットを強調する。
「住まいのかかりつけ医」を目指す
組合では、一般住宅を対象に「住まいのホームドクター」制度をスタートさせた。
建物は完成と同時に劣化が始まる。劣化を遅らせ、新築時の状態を維持させるためには、定期的なメインテナンスは欠かせない。ホームドクター制度は、20年から30年先を見据えた長期修繕計画をユーザーとともにつくり、建物全体の状況を把握することから始まる。これに基づき定期的に組合員が住宅を巡回し、建物内外細部にわたり点検を実施。修繕を要する場所があれば、直ちに対応する。いわば、かかりつけ医の建物版である。
相坂専務理事は例える。「自分の身体の状態をよく知る『かかりつけ医』を持つことや、早期診断・早期治療が健康を維持するために有効であるように、建物にも全く同じことが言えます。傷みがひどくなってから修繕するのではなく、傷みが進む前に定期的な点検と維持管理を行うことで、その進行を遅らせることができるのです」。
|
建物に関するエキスパートを揃える組合が扱う業務内容は多岐にわたる。
「建物を『ゆりかごから墓場まで』組合で面倒みます」相坂専務理事。
「社会活動を通じた地域貢献も組合の大きな役割」大木理事長。
全組合員が出席し毎月開催される定例会。ここでの議論が組合員意識の向上につながる。 |