google

視点・指導員の現場から

少子化時代の企業行動

少子化が止まらない―
日本の総人口は、今の低出生率が続けば七十年後に半減、百年後には3分の一になる計算だ。また、少子化が進み、出産後の女性の職場復帰が難しい現状が続いて国が新たな対策をとらない場合、十年後の労働力人口は現状より約4百十万人減ると推計されている。

子育てを応援する職場

昨年4月、「次世代育成支援対策推進法」(次世代法)が施行された。これは、少子化の進展が経済社会に予想以上の深刻な影響を与えることから、次世代の子どもたちが健やかに生まれ育つ環境をつくるために、地域社会全体で子育てを応援していこうというものだ。

次世代法では従業員301人以上の企業は「一般事業主行動計画」の策定、労働局への届出が義務付けられている。(3百人以下の企業については、努力義務)

「一般事業主行動計画」とは、企業が従業員の仕事と個人生活との両立を図るための雇用環境の整備や、子育てをしていない従業員も含めた多様な労働条件の整備などの取り組みを求めた計画である。(例「父親の育児休暇制度」、「ノー残業デーの設定」など)

この計画に記載する内容は、(1)「計画期間」:一回の計画は2年〜3年、(2)「目標」:各企業の現状より少しでも上回ったものであれば自由に設定。法令で定められている制度については法を上回ることが必要。一つ以上の目標を設定。(3)「目標を達成するための対策とその実施時期」:目標を達成するために、いつ、どのように取り組むかを具体的に記載する、などだ。行動計画の策定については決まりごとはなく、企業の負担増を無理強いするものでもない。自社の実情や従業員のニーズを踏まえ、費用対効果(従業員の満足度)が高まる計画を策定すればよい。

また、認定制度が設けられ「一般事業主行動計画」の目標を達成すれば認定を受けることができる。この認定より、企業は「次世代認定マーク」を広告、商品、求人広告などに付けることが認められ、企業のイメージアップに貢献する。

少子化への取り組み

少子化の進展により、労働力不足や消費市場の縮小、そして従業員の仕事と家庭の両立への配慮など、企業経営にとっても今までにない問題が表面化してくるものと思われる。

「少子化は企業の責任ではない」とする向きもあるが、寿退社の慣行や出産後の職場復帰の壁など、少なからず働く女性への配慮を欠く面があったと思う。また、常態化した残業や休暇制度の不備など夫への負荷も大きい。ちなみに本県における3百人以下の企業の行動計画届出数はわずか3十4社(3月14日現在)にとどまっている。

前述の通り、次世代法において3百人以下の企業については、行動計画策定の義務はない。また、仕事と家庭の両立をしやすい職場環境の整備は、中小企業にとって負担増になる一面もあろう。しかし、少子化に対する取り組みは、企業自ら将来の従業員確保や顧客拡大をもたらす企業行動であることを心に刻んでいただきたい。(飯塚)