中央会が自動車リサイクル法の影響調査
自動車解体業界などに重い負担
昨年一月に施行された自動車リサイクル法。中央会はその影響について、自動車整備・解体業など関連業界を対象に調査を行った。その結果から事務負担の増大や、とくに解体業者は取り扱い台数の減少、受入料金のアップなど経営面で苦慮する様子が鮮明となった。
ここでは、この調査報告書を要約し紹介する。
自動車リサイクル法施行後の経営等への影響について自動車整備業・車体整備業・中古車販売業・自動車解体業583事業所を対象に調査。213事業所から回答があった。
なお、調査は昨年10月に行われ、この3月にまとめられた。
自動車リサイクル法の事務手続き
車検時の事務 半数が「負担増」
車検時の事務手続きの負担について、車検を行う事業者に「リサイクル料金の照会手続き」「預託申請手続き」「料金収納手続き」「リサイクル券の発行手続き」の手続きごとに、負担の度合いを聞いた。どの手続きについても半数前後の事業者が負担増を訴えており、10%前後の事業者は「他の業務に支障がでるほど、手続きが煩雑である」と答えている。
四つの手続きの中でも特に負担増を訴える事業者が多いのは「預託申請手続き」であった。
リサイクル法施行により車検業界に与えた影響は2つある。1つは新たに事務手続きが増えたことであり、もう1つは、ユーザーに負担感が強まったことにより、車検料金の値下げ圧力が起こったことである。
これは法施行に際し、事前にユーザーに対して法についての十分な情報提供、事前説明がなされなかったことも一因であるが、車両保有者の多くが、税金・自賠責等の諸費用を含めて「車検費用」と認識しており、今回リサイクル料金が加わったことで車検時の支払総額が増加。それにより、1一部の車検業者は収入である車検料金を値下げせざるを得ない状況に陥った。
車検関連の市場はすでに多くの業者が参入し、低料金化による過当競争が進んでいる。今回のリサイクル法施行により、車検の低料金化に拍車がかかり、事業者の収益圧迫につながる可能性は高い。
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使用済車の入庫手続き3分の2が業務に支障
使用済自動車の入庫手続き事務は、継続検査時の事務と比べても、事業者の負担は大きい。特に、「解体事実確認と最終所有者への通知」と「引取報告」「引取証明書の交付」の各手続きは、3分の2の業者の通常業務に何らかの支障や影響が発生している。
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使用済自動車 引取料金等の動向
リサイクル法の施行によって、使用済自動車の引取・運搬の料金に影響があるという顕著なデータは得られなかった。
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中古車販売への影響
- 仕入への影響
一部の業者がオークション等の中古車流通市場での流通台数の増加を指摘している。
- 販売への影響
一部販売台数の減少が見られるが、これがリサイクル法の影響かどうかはこのデータからは判断できない。
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自動車解体業界への影響
- 取扱台数への影響
法施行により解体業者の取扱台数に大きな影響が見られる。ほとんどのルートで、増加よりも減少していると指摘する業者が多くなっている。しかし、一部では台数が増えている業者もあり、寡占化傾向にあるといえる。
- 受入料金への影響
台数減少の影響で受入料金にも大きな変化がある。台数減少は解体業者にとって受入料金等負担増(収入減、支出増)の傾向にある。
- 実質的なリサイクル料金の負担
使用済となった車両のリサイクル料金は、最終所有者が支払うことになっているが、使用済自動車の引取時に実質的には解体業者にリサイクル料金を負担させている取引が多いことが判明した。
リサイクル法施行により、解体業者は収益圧迫要因が増えたことになり、使用済自動車数の減少の影響とともに、新たな収益源を持たない業者は今後一層厳しい経営状況を強いられることとなる。