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富士の叫び

個性や特徴生かした多様性ある社会づくりを

「このままでは、日本はだめになってしまう。暴動や革命が起きても不思議じゃない」。長年の慈善事業が高く評価される、ある団体の会議の一幕である。議事の後、一人の理事が世情を憂い滔々と述べた。「友情や協力よりも金や結果。競争のあげく、効率や利益を求めてリストラ。国民の格差は拡大し、解雇後の行く末も保障できない社会にはたしてモラルが育つのか」と。

また、過日行われた連合静岡会長との懇談の際も、所得や働きの二極化、さらには将来への希望の二極化などに触れ、格差社会の進展に危機感を強めた。格差といえばかつて、近代的大企業と中小企業の低生産部門が並存し、資本・生産性・技術・賃金などに大きな隔たりをもつ「日本経済の二重構造」が問題とされた。近年、中小企業の努力により縮小してきたはずの格差は、その業況回復の遅れなどにより一気に拡大に転じ、加速を緩める気配はない。

「格差」は、様々な変化から生みだされる。その変化は、時とともに範囲と規模を拡大しながら襲い掛かってくるが、我々はそれを受けとめて生きていかなければならない宿命にある。

年度当初にあたり、人口減少社会の到来に象徴されるかつてない変化の時代、大きな嵐の中にいることを改めて肝に銘じておきたい。我々の周辺だけでも例えば、ゼロ金利からの緩やかな離陸、政府系金融機関の統廃合や商工中金の民営化問題と組織金融への影響。また中小企業は、最低資本金の撤廃などを盛り込んだ新会社法の施行で経営の自由度を高め、法改正が行われる組合制度は企業統治的色彩を強めいっそうの健全性・透明性が要求される。足元の中央会事業でも、三位一体改革のなかで組織対策事業も中央から地方へ移され、地域への貢献責任がさらに増していく。

こうした変化を受けとめて我々は、弱肉強食による格差拡大社会でなく、それぞれの個性や特徴を生かした多様性を求める社会を築き上げなければ、冒頭の心配が現実味を増してしまう。日本的経営の良さが見直され始めたのも変化であり、「相互扶助」の精神性の高さを痛感する昨今である

静岡県中小企業団体中央会・会長 井上 光一