恭賀新春 
 多士済済 
 特 集 
 視 点 
 編集室便り 




 安さか品質か。機能か品揃えか。ポスト・デフレ時代の消費者ニーズは、複雑に揺れ動いている。中小洋服店にとって勝利の方程式は見えにくいが、
「仕立て屋として技能を磨き、本物を着たい人に心から満足していただく。私は、そんな作品を追求するだけ」と職人魂を奮い立たせる。
「十年着ても、新品となんら変わらない。それこそが本物のオーダー服」が持論である。
「職人と商売人。洋服屋には二つのタイプがあるが、私は根っからの職人」と言い切るように、平成九年に同組合の理事長に就任以来、一貫して組合員の技能向上を押し進める。
 組合事業は技能講習会や情報交換が中心だが、組合員に対しては賞の取得を積極的に奨励。その成果は随所に現れている。例えば昨年、愛知万博の協賛事業として開催された愛知県知事賞コンクールでは、地元業者を押さえて本県がトップ3を独占。驚きをもって、周囲に伝えられた。 
 一方、広報活動の重要性にも着目。理事長に就任するや真っ先に取り組んだのが組合のホームページ作成だ。
また、NHKのテレビ番組「オーダーメイドの技」やラジオその他の媒体に出演するなど、機会を捉えて注文洋服の良さをアピールする。


卓越した技能に黄綬褒章 
後身の指導育成にも尽力 
     クローズアップインタビュー 
静岡県注文洋服協同組合 
理事長 
安藤 元二 氏 

 平成十四年、全日本注文紳士服技術コンクール実技部門で経済産業大臣賞を、また十六年度は厚生労働大臣賞を受賞。今年度の秋の叙勲では、技能功労者として黄綬褒章を手にした。中でも評価されるのは、簡便で正確な採寸方法の考案だ。平面の生地から立体化した洋服にするには長年の経験と感が頼りとされてきた。これに対し、胸の厚み・猫背具合・肩下がりの角度・出腹角度などを指数化することで、初心者でも体型に合った型紙ができるようになった。加えて、こうした技能を惜しむことなく後身に伝授。なかでも個人指導した三人は、第三○回全国コンクール実技部門で総理・産業経済・文部科学大臣の各賞を独占するなど、独自技法の正確さを証明してみせた。
 技術追求への姿勢は、店づくりにも色濃く現れている。昭和六二年には、店内を一新。「職人技を自信をもって公開したかった」と全国的にも珍しい“見せる仕事場”へと大改装を断行した。
 遠く海外にまでその名を知らしめた不生出の仕立て職人、故深見証三氏を岳父にもつ。
 趣味は渓流釣り。また、園芸や美術鑑賞も好んで行う。「審眼を養うにはもってこい。本物に出会った喜びは格別です」と笑う。




中小企業静岡(2006年1月号No.626)