平治の乱で敗れた父・義朝の恨みを晴らすために、平家を討つ。ただ、それだけが義経の生きる目的だった。しかし、兄・頼朝には東国に新しい武家社会を創る壮大な夢があった…。
政権樹立に向けた頼朝の深遠な組織づくりを理解することなく、自由闊達に行動する義経。やがて兄は弟を疎んじ、弟は兄の仕打ちを嘆く。
野望、裏切り、友情、恋。数奇な運命に翻弄されながらも、短いけれど華やかに満開の桜のごとく生きた義経。そこに、人々は憧れる。と同時に、破滅に向かって疾走する英雄の姿に涙を流さずにはいられない。
かつて頼朝が、十四歳から二○年間の雌伏のときを過ごした韮山・蛭ケ小島。一一八○年の夏、この地で源氏の頭領として打倒平氏に立ち上がる。
―物語は、伊豆から始まった。
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