多士済済 
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 四月二九日、春の褒章が発令され本県からは二団体・十九人が受賞した。その栄えある一人である。翌月二七日、黄綬褒章のメダルを胸に皇居で天皇陛下に拝謁した。
「陛下より親しくおことばを賜った。ただ感激、の一言です」と声を弾ませるが、「先人の偉業と比べれば、自分はまだまだ力不足」と浮かれた表情はみせない。
 昭和四四年、家業の法人化に伴い社長に就任。株式会社静岡西部建設を、県内最大級の機械土工工事の専門企業に育て上げた。七○名の陣容、直接施工一○○%が同社のウリだ。
長年、自ら重機のオペレーターとして活躍。その確かな運転技術は、日本有数レベルといわせた。
 管理者としても、大型工事に多くの実績を残す。中でも、昭和四四年に始まった静岡駅前の都市再開発工事の奮闘ぶりは、今でも語り草だ。当事、繁華街や百貨店を抱える県内最大級の再開発工事。竹中工務店や住友建設といった元請企業の機械土工を横断的に担当する工事業者として、「夜間」「短期間」「複数現場」と悪条件の揃った難工事を見事に遂行した。同業者の建設機械や人工を総動員し、勇猛果敢に指揮した仕事振りは元受企業からも絶賛された。

業務精励で黄綬褒章 
人間性重視の技能教育貫き
 
土木業界発展に貢献
 
     クローズアップインタビュー 
静岡県重機建設業工業組合 
静岡県産業廃棄物処理協同組合
 
理事長 
梅原 秀夫 氏 

 こうした“武勇伝”とは裏腹に、性行は沈着冷静。落ち着いた物腰と論理的な語り口で、見栄や派手さを嫌う。「頑固で不器用でも、まじめで一生懸命に汗を流す人こそ人財」が持論だ。現在、職業訓練法人静岡県建設業能力開発協会の会長として『静岡県建設学院』を運営。建設機械に携わる技術者養成に際しては、常に人間性重視の姿勢を貫く。
「当学院は、従業員教育の場。単に技能だけ教えるのではなく、人間づくりが大切だ。その甲斐あって卒業生は皆、それぞれの会社の中心としてがんばっている」と成果を喜ぶ。
 また、県重機建設業工業組合や県産業廃棄物処理事業協同組合の理事長、県労務改善団体連合会会長など数々の要職に身をおくが、労働問題には常に正面から対峙し、解決の糸口をさぐる。「特に最近の若者は、生活習慣や対人関係のほか、人によっては貯蓄の大切さなど細部にわたる助言が必要」と口調に熱を帯びる。
 八人兄妹の三男に生まれる。重機施工業界における組合活動の先鞭をつけた中部重機協同組合。その初代理事長を務めた長兄は、率先して行動に出るタイプだったが、「僕は事前にじっくり考えて行動に移す。三男坊が大勢の兄弟姉妹を説得するために、子供の頃からこのやり方が身についちゃったんだよ」と笑う。




中小企業静岡(2005年7月号No.620)