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 指導員の現場から
 社長が元気な時こそ 
 世代交代の準備を




 昨年、組合青年部の指導を担当していた際、会員の要望で、中小企業における事業継承についての座談会を行った。
 青年部会員の多くは企業の後継者であり、いずれは社長として経営のトップに立たなければならない立場にある。事業継承は必ず直面する問題であるが、その場面を迎えてから対処したのでは、さまざまなトラブルに見舞われてしまい、大変苦労することになる。
 そこで、青年部会員の中で既に社長になっている人から、社長になった経緯、困ったことは何か、まず何から手をつけたか、取引先や従業員との関係がどのように変わったか等について話を聞き、現在は後継者の立場にいる人が、今、何をしておくべきかについて考えた。

社長になってみないとわからないことが多い

 事業継承には、先代の経営者が健在なうちに事業を引き継ぐ場合と、先代の死亡により引き継ぐ場合があるため、それぞれのケースについて話を聞いた。
 最近、前者のケースで会社を継いだ経営者によると、先代の社長である父親が高齢となり、情報化の導入など新たな経営環境への対応が求められる中で世代交代の必要を感じるようになり、先代と相談の上で社長を交代したという。
 事業が順調であったこともあり円滑に事業を引き継ぐことができ、取引先などからも親切にしてもらい、問題なく企業を経営できているとのことだった。
 これに対し、先代である父親の死亡により事業を継いだ経営者は、社長就任当初、取引先などから「先代にはお世話になった」「お父さんは立派な人だった」などと言われ、大変なプレッシャーを感じたそうだ。
 それまでも専務として経営に携わっていたものの、社長になってみないとわからないことも多く、軌道に乗せるのに時間がかかったという。
 また、自ら創業した経営者からは、創業当時はわからないことだらけだったが、相談できる相手がいないので困った。現在後継者である人は、相談相手となる現社長が健在なうちに事業を継いだほうが良いとの意見があった。


バトンタッチの時期は経営者自身が決める

 事業を継承する際には、人(後継者)、物(会社)、金(税金)の問題があるといわれるが、中でも一番重要なのは人(後継者)の問題である。
 何もないところから事業を起こした創業者に比べ、親の財産を継いだ後継者は世間から厳しい評価を受けがちである。それだけに、引継ぎ期間のほとんどない「親の急逝による代替わり」は、後継者にとって辛いものになってしまう。
 多くの中小企業では定年退職の規定などないし、世代交代は経営者自身が決めるしかない。
 そういえば、若くして相談役に退いたある経営者は、「病気になってからでは遅い。判断力がにぶるから。」というのが口癖だった。
 企業の永代発展のために後継者の適正・不適正を見極めながら、「選ぶ」「育てる」事前準備を、社長が元気な今だからこそ進めることが必要である。
(太田)



中小企業静岡(2005年7月号No.620)