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 指導員の現場から
ウエルネス戦略で
 伊豆地域の活性化へ 




進む「かかりつけ湯構想」

 昨年、伊豆地域の宿泊施設は未曾有の台風多発で打撃を受け、今年は隣県で愛知万博が開催されており、宿泊客数に悪影響をもたらす可能性もある。
 また、多様化する宿泊ニーズを満たすには、きめ細やかなサービスや魅力ある企画、価格設定が今まで以上に重要視されるだろう。
 しかし、悲観的な要素だけでなく、地域資源である温泉を健康や癒しに役立てる試みも始まっている
 県東部地区で現在展開中の「富士山麓先端健康産業集積構想(ファルマバレー構想)」である。
 この「ファルマバレー構想」は、医療産業からウエルネス(健康増進)まで幅広い分野にわたり、世界レベルの研究開発を進め、その成果により健康関連産業の集積を図り、地域の発展を目指すものである。
 特に、そのウエルネス戦略は、温泉を主とした地域資源や新たな手法を活用した健康づくりの推進など、ウエルネス産業の振興に重点が置かれている。
 具体策の一つが「かかりつけ湯構想」である。健康を旅行の要素としてとらえ直し、温泉を使って健康増進と心の癒しを図るサービスに積極的に取り組み、伊豆地域の新たな温泉のブランド化を目指す。
 かかりつけ湯は医療におけるかかりつけ医からの発想で、行きつけの温泉を持つことで、健康回復を促進しようというものだ。そのポイントは、単に観光や温泉を提供するだけではなく、健康づくりを軸に、そのツールとして温泉や宿泊、健康食を提供するものである。現在、ファルマバレーセンターでモデル施設の募集・選定作業を急いでいる。
 最近は、温泉の不当表示やレジオネラ菌による死亡事故など、利用者の不信感を招くなどイメージダウンが続いているが、かかりつけ湯では、安全面、衛生面、成分表示などの独自の選定基準を定めている。

温泉+健康で新付加価値を

 今年三月に中央会東部事務所が伊豆地域の温泉組合を対象に、ファルマバレー構想・健康食・温泉療法をテーマとして開催した講習会には、熱海、伊東、下田等の各温泉組合関係者に多数ご参加頂き、その関心の高さに驚かされた。当日の講師の一人である静岡がんセンターの山口建総長は、「伊豆は首都圏に近く、豊富な自然、温泉という三つの優位性をもっている。これらを活用し、ターゲットとする世代を決め、新しい観光についてのニーズを把握し、いかに戦略を立てるかが重要になる」と参加者に呼びかけた。
 社会の高齢化やストレス化が進む中、癒しや健康といったものに対する消費者の関心はますます高まっている。
 ファルマバレー構想を追い風にウエルネスの視点で従来の観光概念に新たな付加価値を見出していこうとする取り組みは、伊豆地域のホテル旅館の活性化策につながると思う。
 今後も行政機関などと連携し、ホテル旅館組合への情報提供を行い、誘客機会の拡大やビジネスチャンスを支援できるよう業務に取り組みたい。

(高木)



中小企業静岡(2005年6月号No.619)