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くみあい百景



▲苦労の末に石の加工を行う。

▲共同事務所で組合員が自由に活動。

カンボジアの砂岩タイルを
市価の三分の一で提供


 組合は、平成十三年に中国から御影石の輸入を開始。翌十四年の秋からカンボジアの砂岩を現地で発掘支援し、その加工業務の委託を行っている。これにより生産された材料は、組合員が担当する建築現場で外壁として使用されている。きっかけは、アンコールワットの遺跡修復事業に理事長の親戚が参加する時に、組合員三名が見学したことから始まる。帰りの飛行機が故障し、帰国の時にたまたま通りすぎたシェムリアップ州で探していた砂岩の原石を見つけたのである。ただその後の作業は、国内事情とインフラの未整備により日本への輸入は、困難を極めた。
 しかし、理事長自らダイヤモンドカッターを飛行機に持ち込むなどして、苦労の末、石材の加工を可能とした。また、日本では、なじみの少ないラテライトの建材としての商品化も進めている。「商社を通さず自分たちの眼で理想とする石材を見つけ出し、お客さまに美しい色彩を持つ砂岩を提供したい。そんな思いから、関係者に大変なご尽力をいただき、中間コストの削減に成功し、市価の三分の一で提供できるようになった。設計士が自ら選んだ究極の石材を安価に供給する。お客さまは、美しく貴重な外国産石材を、低コストで、ふんだんに飾れる。家を建てる人に大きな夢を与えることができると自負しています」(小出理事長)
 今年度の発掘量は、タイルを並べた場合、約一三二○平方メートル(坪数四百坪)、重さにすると二十トンコンテナ四台分の重さになる。こうした事業は、カンボジアの雇用創出に少なからずの貢献をしている。

自由な発想で枠にとらわれない活動を目指す。

 平成十五年、組合の名前を「協同組合ケーアンドエムデザインネットワーク」から現在の「協同組合設計集団無庵」に変更した。理由は、社寺建築の技術を持つ組合員が加入し、伝統的和風建築物の設計までも組合で手がけることが可能になったからである。無庵の“無”は宇宙、零、無限、空を指し、“庵”は、住居、隠れ家、茶室、建築を意味する。“無庵”には、無から有を生み出し、創造性あふれる設計集団としての強い思いが込められている。 
 アンコールワットに代表される歴史的な建造物は、長い間、世界中の多くの人たちを感動させ、生活の一部として存在してきた。「我々もこれにならい、地域、顧客の心に残る作品を残し、様々なシーンで多くの人を感動させていきたい」と小出理事長は語る。



中小企業静岡(2005年5月号No.618)