富士の叫び 
 特 集 
 「くみあい百景」 
 読者プラザ 
 編集室だより 



特 集




広がる企業組合活躍の場


 企業の廃業率の増加、開業率の低迷が叫ばれて久しい中、創業の手段としての機能が注目を集めてきた企業組合…。この2月からは組合員資格の拡大、従事比率の緩和など企業組合制度の改善が行われ、その活用の幅も広がっている。
 今回は改正点を含め、企業組合制度の概要を見直すとともに新たに誕生した組合にも触れながら、その魅力と可能性を探ってみた。



「企業組合」はこんな制度です

 企業組合が注目されている。…といっても、ピンとこない方が多いのかもしれない。
 企業組合は県内一三〇〇組合の中でも四〇組合という少数派。どちらかといえば、目立たない存在であったことも確か。
 ところが制度ができて五〇年以上たった今、身近なベンチャー組織として脚光を浴び、福祉サービス、シルバー事業、地域振興など県内はもとより、全国で続々と創業の夢を企業組合で達成しているケースが増えている。その主役も主婦や高齢者などが多いという。
 近年の企業組合の設立件数の推移をみると(左頁表)、県内・全国とも特にこの数年の伸びが著しいのが分かる。

身近なベンチャー組織として

 企業組合は、現在の組合法制定とともに昭和二四年に設けられた。
 事業協同組合と同じく「中小企業等協同組合法」に基づき運営されるが、組合員は個人事業者や(元)サラリーマン、主婦など個人が中心となり、組合自体が会社のように企業体として事業活動を行う。協同組合の組合員が事業者であり、共同事業は基本的には組合員企業を支援するためのものである点で大きく異なる。
 もともとは、戦後の経済復興期に戦災者や引揚者の「働く場」や「事業機会の確保」を目的に法制化された。昭和二五〜二六年頃には、次々企業組合が作られ、その数も一時は全国で一万組合を数えるほどになった。
 しかし、高度経済成長期などを経て、当初の意義は徐々に薄れ、組合数も高齢化と後継者難により、休眠化するものや自主的解散も多く出て、平成十一年度には一九七八組合と二〇〇〇を割るまでに至った。
 しかし、経済が低迷するなかで株式会社・有限会社のように設立に際して最低資本金の制約がないことや運営に対する平等性などから創業の手段としての機能が再評価。これに女性や高齢者の社会進出、起業ブームなどの動きも絡み、新しいタイプの企業組合が次々誕生していった。組合数も二〇〇〇台を回復するとともに、国も「身近なベンチャー」としての新たな可能性に注目。この二月には、より活動の幅を広げるべく制度を改善するなど、企業組合設立を後押ししている。


中小企業静岡(2003年 9月号 No.598)