東部TMプラザの“卒業生”
異分野の企業で組合を作り、その知識や技術、ノウハウを結集して研究開発や市場開拓を行う融合化組合。昭和63年に融合化法が誕生して以来、県内では現在までに28組合が設立されている。
その中の1つが今回ご紹介するバイオシステムふじ協同組合である。
組合員は5社。清酒製造業者2社に食料品製造、産業用ロボット製造業、ソフトウエア開発業が加入している。
組合が開発を目指した製品は2つ。人材不足を改善するための“麹製造ロボット”と、米粉や酒粕を利用した“新発酵調味食品”である。
組合員が出会うきっかけとなったのは、7月号の“東西見聞録”でご紹介した県東部技術・市場交流プラザ。組合員のうち2社がこれに加入しており、沼津工業技術センターなどの協力を得ながら、中小の酒造業者が抱える人材不足などへの対策を研究し始めた。
「酒造りには杜氏と呼ばれる職人の技術が必要ですが、最近は高齢化が進み、全国的に人材不足。10年後には業界が壊滅的な状況になるといわれています」(清理事長)
また、酒造の過程で発生する米粉や酒粕の処理も業界では大きな問題となっていた。
「ほとんどは廃棄処理されていますが、そのための労力や費用の負担も大きい。体に悪いものではないし、むしろ酵素やビタミンなど、栄養価も高いので何とか利用できないかと考えていたんです」(同)
これらを解決するための製品開発を進める中で5社の交流が始まり、平成7年4月に組合が設立された。
酒どころも注目する品質の高さ
開発テーマの一つである麹製造ロボットは、酒の品質を大きく左右するといわれる麹の製造を自動化するもの。
麹づくりは温度や水分管理が難しく、職人の経験とカンに頼るところが大きい。これをコンピュータを活用してデータを蓄積し、そのデータに基づいてロボットを稼働することで作業の効率化・均一化を図った。
昨年に第一号機が完成し、既に実用化しているが、発酵状態が均一で品質の高い麹を作ることができ、その効果は上々である。
「高級酒に使われる“突破精型”という麹づくりに適していて、味、香りとも良い酒ができます。当初予想していた以上の出来映えでした」(同)
麹製造ロボットは、新潟など酒どころの酒造メーカーからも期待と注目を集めている。組合ではこれを製品化して、全国の中小酒造メーカーに販売することとしている。
もう1つのテーマ、新発酵調味食品の開発は、酵素処理して発酵させた大豆を粉末化したものに、米粉と酒粕で作った麹を混ぜ、再発酵させて作るというもの。
味噌のような風味を持つが、味噌よりも低塩で栄養価も高く、ドレッシングやあえものとして使う。
試作品は完成し、消費者の健康志向にマッチした食品として、学会でも注目を集めているという。
しかし、酒粕の活用の仕方などに若干の課題が残り、組合では今後さらに研究を進めて商品化を目指している。
融合化開発促進事業を活用
融合化組合は“融合化開発促進事業”という補助事業が利用できる。この事業は、補助金約2千万円を活用し、新製品や新規事業の研究開発に取り組むというものである。
バイオシステムふじ協同組合も平成7年度から8年度にかけてこの事業を利用した。研究開発にあたっては、組合員のほか、沼津工業技術センターや大学教授が加わるなど、産・学・官が協力しながら事業を進め、前述のような実績をあげた。
「補助金はもちろんですが、専門家のみなさんにご協力いただいたことでレベルの高い研究ができたと思います」と清理事長は語る。
中小企業が新たな事業分野に進出しようとしても、資金面の負担がネックとなって踏み切れないことが少なくない。そんな場合、融合化組合を組織化し、補助事業を利用することが一歩前に踏み出す足がかりとなることも事実。
是非検討されてみてはいかがだろうか。 |