VISUAL 1 POINT
一般的事項
広範な理事長の職務権限
法律や定款に規定
法律では、理事の中から組合理事長を選任することを規定している。
中小企業等協同組合法(以下組合法)を例にとってみると、組合法では、第四二条で理事会の決議をもって理事の中から理事長を選任することとしている。
この規定は商法の第二六一条を準用していて、その第一項に「会社ハ取締役会ノ決議ヲ以テ会社ヲ代表スベキ取締役ヲ定ムルコトヲ要ス」と規定している。
更に第三項では、代表取締役の代表権を規定していて、組合法では、これを理事長に置き換えて組合代表権を規定している。
一方、組合の定款でも、「理事長は、本組合を代表し、本組合の業務を執行する。」とその職務内容を明示している。
この理事長の代表権は、組合の定款や総会の議決の範囲内において、組合の業務全てに及ぶという大変広範な権限を有している。
その行為はそのまま組合に帰属することになり、たとえ定款で規定したり総会で議決してこれに制限を加えても、第3者に対抗することはできない。
それだけに、理事長の職責は重いといえるが、リーダーとしての職務を全うするために与えられた当然の権限であるともいえる。
民主的運営とリーダーシップの狭間にある理事長
組合は、人的結合体といわれるように、人間の集団である。
かたやその組合員である企業は、資本を統合した集団である。
組合は、利益を追求する会社とは違って、組合員に奉仕することを最大の目的としている。
そのため、組合員が期待する方向に組合を運営する必要があり、1人1票制を採用しているのも組合員の意見が平等に反映されることを狙っているからである。
しかし半面、組合自体もひとつの事業体であるから、事業を効率的にタイムリーに運営することもあわせて要求される。 この極めて民主的な部分と牽引力(リーダーシップ)という一見相反する要素の狭間に立つのが組合理事長であり、そこに理事長の苦悩があり、同時に醍醐味があるのかもしれない。
それでは、実際にこの理事長職にある組合代表者は、どのような思いでこの職に就き、重責を全うしているのか。本会役員組合へのアンケート等を通じて考えてみることにする。
VISUAL 2 POINT
本誌アンケート調査から
必要なのは「決断力と実行力」
今回この特集を編集するにあたり、中央会の理事を務める組合理事長に対して「組合代表者意識調査」を実施した。
この調査では、理事長在職年数や理事長就任当時の状況、組合代表者として求められる条件、そして健康法等々、アンケートを通じて忌憚のないご意見を頂戴した。
こうしたアンケート結果から、組合理事長の姿の一端を探ってみた。
【調査概要】
調査名:「組合代表者意識調査」
対 象:中央会役員(理事)組合等代表者
サンプル数:29件
平均9つの役職をこなす
今回回答いただいた組合代表者は29人。
その在職年数は1〜4年と就任まもないものから、14年を超えるベテランまでバランスがとれている。
あえて傾向をいうならば、在職「1〜4年未満」と「10〜14年未満」に比較的数字が集中しているといえる。
また、初めて理事長に就任する以前の役職は、全体の四割が「副理事長」と最も多く、次に「専務理事」「役職なし」が17%と同数で続く。
更に、初めて理事長に就任したときの年齢を聞くと、5〜60代が中心(理事長就任当時の平均年齢は54歳)。20代で初代理事長に就任したという回答も1件あった。
また回答者の現在の平均年齢は、66歳。まさに、業界や組合活動の豊かな経験を持つ指導者であるといえる。
こうした中で、理事長職を務めながら幾つくらいの役職を兼務しているか聞いたところ、平均で9つの役職を持っているという結果がでた。単純平均で割出したため、参考までに最高値をいうと、1人で27の役職を持つという回答もあった。
初めて理事長に就任した
ときの印象
今回のアンケートで、初めて理事長に就任した当時の印象を聞いたところ、「組合員への責任の重さ」が31%とトップ。また「経営者と組合代表者の立場の違い」が22%、「組合運営の難しさ」を感じたという回答が21%でこれに続いた。
またその当時を振り返った中でコメントを求めたところ、「現実にその立場に立つと責任の重さを痛感した」、「同等の立場にある企業の集団である組合の代表者として、十分なリーダーシップを発揮できるか不安があった」、「組合員の事業規模の格差もあり、どこに照準を定めて運営するか腐心した」といった組合員に対する責任と組合運営の難しさを率直に表したコメントが多くみられた。
しかしこれと同時に、組合のトップとして舵取りすることへの意欲を感じたという回答も17%あり、一抹の不安を感じつつも、果敢に組合運営に挑戦していこうという姿が浮き彫りになった。
◆グラフ-1
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