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拝啓、組合青年部様 
 
▼「醤油品評会」では、消費者や有識者が真剣な表情で審査を行う。
 

=CONTENTS=

▼OUT LINE
▼事例 1
▼事例 2

 

わかむらさき会
醤油品評会の開催など
ユニークな事業を展開

活路開拓事業の
“実行部隊”として結集
 青年部の発足は、昭和五六年四月。今年で十六年目を迎える。
 親組合である静岡県醤油醸造工業協同組合は、県内の醤油醸造メーカーにより二四年に設立。業界の“オピニオンリーダー”として活躍している。
 組合では、五四年、業界の将来ビジョンを考える「活路開拓事業」に取り組んだ。この事業の“実行部隊”として、組合員の後継者が結集。これがきっかけとなり、「わかむらさき会」が誕生した。
 「青年部が誕生したことで仲間意識が生まれ、後継者同士の“風通し”が良くなりました」(わかむらさき会鈴木会長)
 同業者としての`競争意識aは当然ある。しかし、彼らには、他県の大手メーカーの攻勢から地域の醤油を守るという共通の目標があった。さらに青年部のメンバーが年代的に近かったことも、会の結束を強めることに繋がったという。

青年部事業の柱「醤油品評会」
 鈴木会長が、事業の柱としてあげたのが「醤油品評会」である。
 この事業は、青年部の発案で親組合の事業として、平成四年度にスタートした。
 生産者にとって“良い製品”ではなく、消費者に喜んでもらえる商品を作りたい。
 そんな願いからはじまった「醤油品評会」は、消費者や卸・小売業者、専門家などが組合員の製品を審査し、消費者の嗜好を探ろうというもの。親組合は、この運営を青年部に一任した。
 「今年で六回目になるこの品評会は、今では青年部の中心事業になっています。醤油はつけて食べたり、煮物として利用したりすることから、最近では“付け醤油部門”と“煮物醤油部門”の二部門に分けて審査を行っています」(同)
 青年部の自由な発想とこれまでの経験が、審査の効果を高める工夫も生んだ。
 またこの事業は、消費者のニーズを吸い上げるという直接的効果以外にも、多くの副産物を生んでいる。
 「品評会に出品された醤油を比較したことで、一つひとつが色から味に至るまで全く違うことに気づきました。また集めたデータが、組合員の技術の底上げに役だったことも見逃せません」(同)
 親組合からの“下請”ではなく、わかむらさき会自身の事業としてのプライドがある。さらに、懇親会や一般的な研修会とは違い、仕事に直結する内容だけに、会員も参加しやすい。青年部の活動そのものもこれで一層活気づいた。

他県に、そして異業種に―
広がる交流の輪
 青年部の交流は、県内にとどまらない。
 愛知、三重、岐阜そして静岡の東海四県の青年部で構成する「東海味噌溜醤油青年部会」では、年三回、持ち回りで研修会を開催。各県の動きや技術情報などを交換しながら交流を深めている。
 また他の業界の青年部を知るうえで「青年中央会の存在は大きい」と鈴木会長はいう。
 「青年中央会は、県内の異業種の青年部が集い交流する組織。我々に他業界の若手を知る機会を与えてくれます。青年中央会の事業は、わかむらさき会の活動の一部として大きな割合を占めています」

今の経験が財産に
 わかむらさき会は、メンバーの年代が近いこともあり、新しく仲間が加わるといった“新陳代謝”がない。またメンバーの一部は、すでに理事に就くなど、親組合の運営に参画するようになってきた。
 「世代交替の狭間で、いったん青年部の活動は中断するかもしれません。しかし我々仲間が協力してきた経験を生かして、これからも“醤油”の看板を守っていきたいですね」(同)
 わかむらさき会は、親組合と協調しあいながらも独自のポリシーを持ち、青年部らしい斬新な発想が組合活動に新鮮味を加えている。ここに青年部活動の魅力と醍醐味があるのではないだろうか。

 

親組合に聞く。

静岡県醤油醸造工業協同組合
理事長
鈴木昇太郎
 わかむらさき会の活動には満足しています。今の活動を、さらに積極的に進めてもらいたいですね。
 私は彼らの年代と同じ時分に、醤油の共同工場の建設に取り組みました(現:県産醤油協業組合)。県内の醤油業界が生き残るためには、この共同工場はぜひとも必要だった。毎晩のように熱心に議論しましたよ。
 そして、打ち合わせを重ねていくうちに、いつの間にか同年代の者に疎通ができて夢が実現できた。若い者同士だからこそ、腹を割って話し合える。そして積極的に行動できる。これは若者に与えられた特権です。
 ある会社の社長さんから、こんなことを教えられました。「後継者をつくったら、経営者の仕事は半分終ったようなものだ」と。
 おかげさまで「わかむらさき会」という後継者組織
ができて、私の仕事も半分以上終ったわけです。醤油の看板には、その歴史に裏付けられた信用と重みがあります。彼らには、このことを十分認識して先輩が造り上げた歴史を継承して欲しいですね。    (談)

青年部の概要
(名   称)
わかむらさき会
(親 組 合)
静岡県醤油醸造工業協同組合
(会 員 数)
19人
(主要事業)
(1)醤油品評会の実施
(2)技術研修会、海外視察
(3)ふるさとまつり、組合まつりへの参加
(年間予算)
2,540千円
(賦課金額)
380千円
(1会員当り20,000円/年)
(親組合補助額)
1,200千円 ※平成8年度実績
(会   長)
鈴木良彦
(株式会社鈴勝 代表取締役

 


中小企業静岡(1997年 2月号 No.519)