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協同組合アーミック

高度な需要に応える共同設計事務所

組合を一級建築士事務所に登録

 建築物の設計を行う一級建築士事務所。その多くは一、二名で運営されている個人事務所である。
 協同組合アーミックは、浜松市内で一級建築士事務所を運営し、企画、設計、監理を行う六人によって昨年五月に設立された。
 主な事業は共同設計事務所の運営。組合員は個人で事務所を運営してきたが、事業の近代化を図るために共同設計事務所を設置。設立後間もなく「アーミック建築士事務所」として一級建築士事務所の登録を行った。
 組合では、組合員が受注した設計業務を共同で行うほか、共同受注にも取り組んでいる。
 組合のコンセプトは『コンストラクション・マネジメント』。
 「単に建築物を設計すればよいというものではない。建築の企画から、土地の選定、投資に対する採算性など、顧客に対する幅広いアドバイスのできる、コンサルタント集団でなければならないと考えています」(金子理事長)
 組合員はそれぞれ一級建築士として十五年から三十年近くに及ぶ実績があり、その中で培った知識や技術を集約した、より高度な設計やコンサルティングの提供を目指している。

一人では生き残れない
 組合員は全員、県建築士会浜松支部に所属。同じ時期に理事を務めるなど交流があった。その中で共同化の話が持ち上がったのは三〜四年前。
 「いつも『一人、二人の建築士事務所では生き残っていけない』と話していました」(同)
 近年は建築物(特に公共的なもの)の施工件数が少なく、業界内の過当競争が激しくなっている。また、最近の建築はいろいろな角度から多様化が進んでおり、これまでより高度な技術を要するものが多くなる中、こうした需要に順応できる大手業者が参入する動きも見られる。
 「組合員単独で高度なニーズに応えることには限りがあります。個々の建築士に能力があっても、資金や技術者の数が足りない。最低五人はいないと無理です」と金子理事長は業界の厳しい現状を語る。
 今回、設計事務所を共同化する中でOA機器を多数導入し、事務所内をネットワーク化。コンピュータを使った設計を行うことができる、浜松市でもトップクラスの近代的な設計事務所となった。こうしたことで、資金や設備の面で体質強化が図れる一方、より高い技術を目指した研究や人材育成にも力を注げるようになった。

将来は協業化の意向も
 共同設計事務所を設けるにあたり、会社組織にすることも考えた。
 「しかし、会社ではどうしても上下関係ができて自由な発想ができなくなる。個人で培ってきたノウハウや個性を守りながら共同化するためには組合の方がいいと考えたわけです」(同)
 現在、事務所は組合員と職員六人の計十二人で運営されている。当面は組合員が個人事務所で受注した仕事が中心だが、徐々に組合で受注する仕事も増えており、組合事業の出足は順調だ。
 「これまでは個人の知識や技術でやってきた仕事。共同化することに不安もありましたが、毎日顔を合わせている中でコンセンサスもとれ、気持ちよく仕事が出来ています」と語る金子理事長が、組合運営の中で重視するのは『信頼と協力』。
 「性格も個性も違うメンバーが一緒に仕事をしていくためには、わがままを抑えることが大切。互いに信頼し、協力しながら事業を進めていければと考えています」(同)
 組合では、今後事業規模が拡大すれば、企業組合や協業組合に組織変更する事も検討している。
 「今は組合員の営業力に頼らざるを得ませんが、組合の営業力が強くなり、個人事務所が必要なくなれば協業化したいと考えています」(同)
 強い信頼関係で結ばれた専門家集団の活動は、将来に向けてさらに大きな目標を掲げながら進められている。

▲OA機器が導入された事務所内 ▲コンピュータを使った設計も行える


中小企業静岡(1997年 2月号 No.519)