google

クローズアップインタビュー

視線の先にはつねに若者の姿
美容と福祉の融合も模索

ビューティーしずおか協同組合
久保田治良 理事長

美容室を経営しているわけでもない私がなぜ理事長を務めているかって? それは、美容の道を志す若者がいるからですよ」。

社長を務める企業は、シャンプーやリンス、カットウイッグなど理美容商材を扱う美容ディーラー。だが、単に商品を提供するだけではない。個店の特色にあわせ、最適な商品を店舗展開まで含めて提案するコンサルタントでもある。

「多くの美容院を回って感じたのは、そこで働く従業員の学ぶ機会の少なさです。どうしても零細店舗では、人手やお金の面から十分な教育を施せないのが実情」。

美容業界を担う若者が置かれる状況を肌で感じたことが組合設立の原動力となる。

「この業界は、“徒弟制度”が残る一種の職人の世界。師匠から高い技術を習得できる一方、従業員としての保障制度が立ち遅れているのも事実。若者が業界に根づく環境をつくりたい一心でした」。

組合設立の翌年、業界を大きく揺るがす美容法の改正が行われた。

「今まで可能だった無資格者の美容業務が禁止となった。大げさに言えば、美容師の資格を持たない者はお客さまの肌に触れることができなくなる、ということです」。

そこで打った一手が、組合員の従業員を対象とする2年制美容専門学校の開設。いわば「組合立」の美容師養成機関にあたる同校が目指すのは卒業後、即活躍できる人材の育成だ。

「資格取得だけを目的にするのではなく、現場で求められる技術を身につけるための実践教育に力をいれたカリキュラムが特長です」。

その取組みは国際的にも高く評価され、平成16年には、国際美容師ライセンス「HIQ」の認定校となったほか、国の若年者就職基礎能力「YESプログラム」や「実践型人材養成システム」を積極的に取り入れるなど、明日の美容業界を背負う若き人材の発掘と育成に余念がない。

いま、新たな方向性として模索するのが美容と福祉の融合である。

「美容業界として障害を持つ方や高齢者といかに向き合うか。いくら店舗をバリアフリー化しても、我々の心にバリアがあってはいけない。障害を持つ方や高齢者と同じ目線で接することができる心のバリアフリーをもつ美容師を育てていきたい」。

微笑を絶やさない視線の先には、つねに若者の姿がある。

「趣味?“美容師の卵”と接することかな。休日も家でじっとしてられず、1回は学校に出てくるんですよ。学校、若者大好きなんです」。