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クローズアップインタビュー

駿河湾深層水を利用した「New乳」が好評
新ブランドで消費者の心をつかむ

静岡牛乳協同組合
理事長 大庭圭壹 氏

「ぼくはね、小学生のころから獣医になりたかったんですよ」。協同組合理事長の名刺とともに差し出された、もう1枚の名刺には「動物病院院長」とある。

昭和3年に祖父が興した大庭乳業の社長を勤めるかたわら、週に1度、獣医として白衣をまとう。

「家業は、もともと搾乳用の牛を飼育し、牛乳の製造・販売を行う酪農兼業。幼い頃から、獣医の資格をもつ従業員を見て育つうちに、いつしか獣医に憧れていた」。

牛乳は栄養価の高い健康飲料として、長らく食卓の圧倒的な支持を受けてきた。しかし、消費者の嗜好の多様化や代替品の登場などで15年ほど前から消費量は減少。価格に至っては、「昭和53年を境に下がり続け、スーパーの安売りの目玉商品という状態が続く。

加えて、乳製品の輸入自由化や品質管理、HACCPへの対応など業界を取り巻く環境は厳しさを増していく。こうした中、中小乳業メーカー4社が、加工部門の集約化を通じ、業務の効率化を図るため、平成10年、組合設立に踏み切った。翌年には、国の補助金を活用し、共同加工場を静岡市内に設置。稼動から8年を経た現在、年間加工量は当初の約3倍に達する約1万2千トンにのぼる。集約化の効果は絶大だ。

さらに平成17年から、中央会の補助事業などを利用し、新ブランドの開発に乗り出した。昨年11月には、県から経営革新計画の認定を受け、その動きは加速。昨秋新ブランド「NEW乳」が誕生する。

第1弾「低脂肪乳」は、駿河湾から取水した海洋深層水を脱塩処理し、牛乳にブレンド。さっぱり感を出す一方、隠し味にはちみつを用い、旨みやコクにもこだわる。今年3月発売の「濃厚乳」はバターを使用することで、牛乳本来の旨みに濃厚感をプラスした。

「“健康”と“地産地消”がキーワード。しかし、デザインには、これらを表す富士山や牛、牧場などは一切使わないことにした。目指すのは“脱牛乳”」と発想は大胆だ。さらにコーヒーや抹茶、アロエなどと牛乳の融合にも挑む。見据える先は、牛乳をベースにした新たな機能性飲料の開発だ。

大学の獣医学部を卒業後、家業を継いだ。大学時代の友人が次々と動物病院を開業するのを目の当たりにし、29歳で動物病院を開業。20年来の夢を実現した。

小学生で始めたスキーは、プロ級の腕前。全日本マスターズ大会に大回転(GS)県代表として出場する実力派だ。