特 集 
 多士済済 
 視 点 
 ネットワーク 
 編集室便り 



 指導員の現場から
 現場力を高める5S 



「整理・整頓」は専門技術用語

 「整理・整頓」ということばは、たいへんなじみが深い。子供のころに母親から「遊びに行く前に机の上を整理整とんしなさい」と言われ、片端から机の上のものを引き出しに押し込んだ記憶がある。
 似たようなことは誰しも経験があるだろう。先日、子供の通う小学校の授業参観でも、黒板に書かれた「整理整とん」の文字を見つけた。元来、このことばはあらゆる場所で使われるとても身近な存在なのである。最近、作業現場における改善活動のコンサルタントに同行して中小企業の工場、製造現場を訪問する機会が増えた。その折にも、工場内の張り紙にこのことばが書いてあるのをよく見かける。しかし、このなじみ深さが作業現場の改善活動の一環として整理・整頓を行う場合、落とし穴になっているように思える。「5Sをいくらやってもコストが下がるわけではない」とか「仕事が忙しく余裕がないので工場が汚くても仕方がない」という声をよく耳にする。これは、整理・整頓をそうした世間一般で使われるのと同じレベルで考えている証拠である。 
   
整理ひとつで問題点を顕在化

 ところが工場での整理・整頓が意味するものは、これとは異なる。たまたま同じことばを使っているけれど、中身はまったく別の専門技術用語なのである。
 改善活動における5Sとは「整理・整頓・清潔・清掃・躾」である。その最初のSが整理である。整理活動の定義は「要るものと要らないものとに分けて、要らないものは捨てること」と教わった。実際、これを実行に移すのに苦労があるのだが、肝心なのは要らなくなった部品や製品などを凝視し、考えることにある。 
「何でこうなってしまうのか?」、「どういう情報によって買う部品の量を決めているのか?」、「購入のリードタイムは長すぎないか?」、「なぜ造り過ぎでしまったのか?」。      
 理由は、いろいろとあるのだろうが、これらのモノが大切な会社の資金を寝かせていることは間違いのない事実。工場内のムダの最たるものである。このように、整理ひとつだけでも会社や工場の問題点を顕在化させることができる。

外部からの刺激で5Sを維持

 「5Sの大切さは理解しているが、それを維持するのは大変だ」と言う経営者や管理監督者は多い。何でもそうだが、最初に取り組む時には、緊張感や新鮮味があり、勢いでやることができる。しかし、それが一段落して日常生活に入ったとたんに関心が薄くなり、推進力を失い、下手をすれば元に戻ってしまう。そこで、こういうことが起きないように、取引先やコンサルタントなどを招き、外部の目に触れる機会をあえて設けることもひとつの方法だ。本来的な改善活動の考え方に反するようなやり方ではあるが、外部からの刺激を利用して5Sを実践せざるを得ない状況をつくってしまうのである。    
 いずれにしても、5S活動は何より継続性が求められる。日々の積み重ねで派手さはないけれど、原点に戻ってあるべき姿を現場で追求する大切な取り組みなのだ。

(佐塚)



中小企業静岡(2005年9月号No.622)