■ある日突然 仕入先の要求
平成一六年七月、主に軽油の購入斡旋事業を実施する静岡県中部トラック運送協同組合(理事長・望月秀司、組合員七人)は、仕入先から一ヶ月分の仕入代金に相当する保証金(一〇〇〇万円)の差入れ又は手形サイトを一ヶ月短縮するよう要求された。
組合は緊急全体会議を招集し対応について約三時間延々と協議した。
結論は、運送業界において原油価格の高騰や運送代金の激しいダンピングにあって厳しい経営を強いられていることから、仕入先の要求に応えられないであったが、これを結論として伝えても、火に油を注ぐようなもので、仕入先の要求がますます厳しくなるであろうと、その代案をさらに議論した。
苦肉の策として考えたその代案は、組合の決算書を提示することであった。
組合は、今期一八期を迎えた。毎期二百万円前後の利益を計上しているが、利用分量配当や出資配当をせず内部留保に努め二三〇〇万円強蓄えた。
蓄えがあるからといって土地や減価償却資産を購入せず、預金や静岡県中小企業団体中央会の年金共済で運用しているから、いつでも現金化できる状況にある。組合員の倒産により売上代金が回収不能となった場合、この内部留保金を代金決済資金として充当することを、組合員の了解を得て仕入先との交渉に臨んだ。
交渉から一ヶ月後、仕入先の担当者が理事長の会社を訪れた。担当者からは、保証金や手形サイトの話はなく「仕入枠をもう五〇〇万円増やします。」と意外な回答であった。
その担当者との雑談の中で分かったことは、組合の決算書の内容と組合員の倒産に伴う代金保全措置の対応が好結果をもたらしたということであった。
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