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組合よ 新潮流の担い手となれ

 八月十五日、その日わが国は六○回目の終戦記念日を迎えた。脳裏に浮かぶのは一面焼け野原だった終戦直後の風景で、そこから想像もできない奇跡的な復興をよくぞ遂げたものだと思う。
 戦後まもなく公務で渡米した私は、現地工場の量産体制などを目の当たりにし、日本は負けるべくして負けたのだと痛感させられた。しかし、その後は技術力と競争力を伴う驚くべきスピードで、素材系や高機能部材から金型・資本財にいたる幅広い分野において産業集積の基盤を形成した。加えて川上(原材料)―川中(部品)―川下(製品)の各段階で相互依存関係を醸成し、世界に名だたる加工貿易国として確固たる地位を築いてきたのは周知のとおりである。
 平成に入ると、間もなくして複合不況が我々を襲った。その最中、大手企業を中心とするリストラの断行や工場の海外移転による空洞化の進展は雇用不安やモノづくりの弱体化を招き、不況をさらに深刻化させた。失業率は一時五%もの高水順に達し、個人消費にも長く暗い影を落としている。考えれば、今ほど産業構造・消費構造の変化に即応した企業行動が求められる時はない。
 こうした中、一部では生き残りをかけた産業再編、新産業開発が業界主導型で進み、薄型テレビやDVDレコーダー、デジタルカメラの新三種の神器に代表される消費復活への展望も開けてきた。今や系列構造は多面化(メッシュ化)し、垂直関係のみならず川上相互・川中相互で連携・協同への新たな関係も見られるようになった。中小企業が有する独自の技術やアイデアが、意欲あるコーディネーターのもと、柔軟な相互補完により新商品開発や販路開拓へと結実するケースは、今では決して珍しくはなくなった。
 我々中小企業組合も、迷うことはない。既存の共同事業をベースにしつつも、ソフトな企業連携を組合内外に広く求め、新潮流の担い手としてその可能性を新たに切り拓いていくことを強く望むものである。

静岡県中小企業団体中央会・会長



中小企業静岡(2005年9月号No.622)