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 「くみあい百景」 
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特 集



 企業の社会的責任が重要視され始めたのは、七○年前後の公害問題がクローズアップされた時期とされる。公害病の原点といわれた水俣病や四日市のぜんそく患者多発問題は、企業とそれを取り締まる立場の行政をも巻き込んだ訴訟問題へと発展。その後も環境問題は後を絶たず、企業活動が社会にもたらす罪悪として非難の対象とされた。
 二一世紀にはいって、企業の不祥事が立て続けに表面化した。乳製品による集団食中毒事件、食品偽装問題、原子力発電所のトラブル隠蔽、鳥インフルエンザ感染隠蔽事件など…。つい最近では、信州の名湯として絶大な人気を誇る長野県白骨温泉でも、まさかの入浴剤混入事実が発覚。築き上げた名声は一気に失墜し、宿泊客の相次ぐキャンセルに追われているという。
 かつての企業などの不祥事は、一部の不心得者が反社会的行動に走ったり、経営幹部が外部と癒着した結果の不正行為という図式が大半を占めた。しかし、昨今の一連の不祥事は、様相が異なる。すなわち、不正や違法の認識がないままに、普通の社員が会社の利益のために意図的に行ったとされるケースが多いことに、病巣の深さを感じさせる。


「社会的責任」。経営上の意味

 昨年三月、経済同友会は一冊の企業白書をまとめた。これは、企業の社会的責任(CSR)を取り上げたもので、CSRによって社会と企業の持続的な相乗発展を目指すべきことを主張している。
 欧米の先進国では、企業も社会の一市民であり社会的な責任を果たすべきだ、という考えが既に定着しつつある。企業は売上を伸ばし、利益を出し納税すれば社会への責任を果たしたという従来の考えは改め、これからは、「株主等」「消費者・顧客」「住民・地域」「従業員等」といった広範な利害関係者に対する企業責任が求められる時代となった。これを果たさない限り、企業は社会からペナルティーを受ける事態にもなりかねない。
 最後に、企業が社会的責任を果たし、CSR経営を行うことは、その企業に対してどのようなメリットをもたらすのか。
 これに対して、経営コンサルタントの越智訓男氏は、次の五つの効果を指摘しているので、ここに紹介しておく。
 一. 企業に対する信頼性の高まり
 二. 企業リスクの回避
 三. 従業員のモラール高揚と人材確保
 四. 取引先との良好な関係維持
 五. 社業の安定した発展、事業拡大



中小企業静岡(2004年8月号 No.609)