指導員の現場から
組合運営の健全化



 平成十五年三月二〇日、天竜フィンガー事業協同組合は、債権者六二名に対し総額約三億五四一一万円の債務を負担して支払不能の財産状態にあることが認められ、破産宣告の決定が下りた。組合の換価価値のある資産は三〇〇万円程度で、一般債権者に対する配当がない異時廃止の破産となった。
 また、西部のある組合では自主的に解散しようとしている。累積欠損があったが、土地を売却すれば何とかなると楽観視していたようだ。しかし地価の下落を招き、売却しても負債を補てん出来ないことが分かり、不足資金の捻出に役員が苦労していると聞いている。
 現在、静岡県内には一三〇〇強の組合がある。その中に昨年欠損が生じた組合、連続して欠損が生じている組合もあろう。
 今年四月中旬、出席したある組合の通常総会では、二五〇万円の欠損が生じたため繰越剰余金約一〇〇万円を取崩し、差引一五〇万円の欠損金を翌期に繰り越したにもかかわらず、次年度の収支予算書は、剰余金を出せない収支トントンの計画予算であり、その予算案を出席者全員が承認していた。
 来賓の祝辞で、「繰越欠損をどのように穴埋めするのか、役員さんとしての対応策を組合員に示すべきであり、それがなければ組合員として役員に質問する姿勢が必要ではないでしょうか」と説教じみたことを言った。
 組合の役員は、事業費を調整することで多少の利益が可能であると考え、予算書を提出したのかも知れません。そのような背景が数字では分からないので、組合員としては役員に遠慮せず建設的な質問をして欲しいものである。何も言わない事が組合の体質化してしまうと、結果的に取り返しのつかない状況に陥ることになりかねない。
 組合事業の利用者は組合員である。組合の収入財源が潤うか否かは、組合員の利用の有無に左右される。
また、利用があっても採算性を度外視するような手数料であると赤字体質に転落する。この手数料をめぐり問題になることがあるようだが、組合の健全運営の観点から建設的な結論を出して欲しいものである。
 いずれにしても、組合や組合員にお願いしたいことは、倒産という最悪の結果を招くことがないよう組合の役員としての善管義務を果たしていただきたいし、組合員としては、事務局や役員まかせにせず自社経営と同様に責任ある姿勢を組合に示していただきたいと強く願う次第である。
 以前、福祉関連事業を活発に展開している組合を視察した時、「過去いくつかの会社を起こし、人まかせにした会社はことごとく失敗しました。この様な教訓があるためか、組合といえども事務局まかせにせず、常に組合に顔を出します」という理事長の言葉が、今になって理解できた思いである。
中央会西部事務所
真野美博



中小企業静岡(2003年 6月号 No.595)