特 集



提 言
輝け!組合スピリッツ!

時代が求める組合の姿

白鴎大学 経営学部 教授

樋口 兼次 

講師略歴
1943年 東京都品川区大井町生まれ
 慶應義塾大学経済学部卒業、
 政府関係機関勤務の後、拓殖大学教授を経て
 白鴎大学経営学部教授・大学院教授を務める。
 東北師範大学客員教授(中国長春市)
 社団法人中小企業研究所 所長
 専攻:産業構造論、地域経済論、中小企業論



ソフト化サービス化社会が始まった

 先進国は、本格的なソフト化サービス化社会に突入しています。
 工業社会からソフト化サービス化社会に変わるということは、大量生産=大量消費や大規模利益=集中型システムなどの従来のシステムが変わり、中小企業やNPOといった小規模でネットワーク型のシステムが活躍しやすくなるといわれます。新しい中小企業の時代が来たといえるのです。
 中小企業の組合も新しい時代にふさわしい形と内容を創り出さなければなりません。中小企業の組合組織が進化することで、中小企業の活路が拓かれるのです。

これまでの組合の姿と今後のあり方

 中小企業の組合組織は、今日まで大きな役割を果たしてきました。しかし、経済社会が大きく方向転換しつつある今日、発想を転換しなければならないといえましょう。
 第一に、組合の意義の変化です。従来は、組合員は経済的弱者であり、その弱点を克服し、大企業との格差を是正することに大きな意義がありました。しかし、今日の経済社会の流れは、中小企業が持っている本来の「強み」と多様な「個性」を活かすための組織として期待されているのです。
 これからは、組合員である個々の中小企業がそれぞれの持ち味を生かして個性ある生産と経営を行うために必要な共同化を考えなければなりません。情報やデザイン、環境対策、国際化、市場調査などソフトでサービス型の事業がきわめて重要になるでしょう。
 第二に、組合と組合員の関係の変化です。 従来は、組合が行う事業を組合員が利用する「受身型」でした。これからは、組合員が主体的に共同事業を構想し、他の組合員に働きかけ、組合専従スタッフと相談・具体化してゆく「参画型」へ変わる必要があります。
 第三に、組合は、業界や仲間だけでなく、外部の専門家やユーザーとのパートナーシップをつくり、開かれた組織を目指すべきでしょう。
 第四に、社会的な関係の変化です。社会的利益に適合しない企業活動は、市場から脱落する時代です。組合は、率先して企業活動の公益性の追求と企業倫理の確立・普及が必要になっています。また、これまでのように経済事業中心の共同事業から「地域社会や国民の生活の向上に寄与できる事業」への取組みが重要になっています。
 以上から、次のような新たな組合モデルがあげられるものと思われます。


中小企業静岡(2002年 11月号 No.588)