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・・・会計 税務
「事業分量配当」
 
知っておきたい手続きと税務上の取扱い
税理士
日 野 藤 司


 決算が近づき、組合によっては剰余金が生じ「事業分量配当」を考えているところもあると思います。
 今回は、組合員が組合に支払った事務手数料や使用料の割戻し的な性格を持つ「事業分量配当」について解説することにします。

事業分量配当の税務上の取扱い
 協同組合等(企業組合・協業組合等は含まない)が各事業年度において支出する次に掲げる金額は、当該事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する。(法人税法六一[1])
一、その組合員その他の構成員に対しその者が当該事業年度中に取り扱った物の数量、価額その他その協同組合等の事業を利用した分量に応じて分配する金額
二、その組合員その他の構成員に対しその者が当該事業年度中にその協同組合等の事業に従事した程度に応じて分配する金額
 これは、税法が特に協同組合という性格を考慮して、剰余金処分のものについて特例を設け、申告書別表九の「タ協同組合等の事業分量配当等の損金算入に関する明細書」を作成し、確定申告書に添付し、別表四において「利用分量配当金損金算入」とし「総額」欄と「社外流出」欄に記載して減算します。
 損金算入できる分配は、その剰余金が組合と組合員との取引及びその取引を基礎として行われた取引により生じた剰余金から成る部分の分配に限られるので、固定資産の処分等による剰余金や自営事業から生じた剰余金のように組合員との取引に基づかない取引による剰余金の分配は、これに該当しないこととなります。
 また、損金の額に算入される事業分量配当は、当期における事業分量に応じて計算された分配金に限られるので、当期の所得金額を超える事業分量配当等は損金として認められません。
 組合における利用分量配当金は、組合員が組合に支払った事務取扱手数料等の割戻しに相当するもので、組合決算にあたっては、これを剰余金処分案の中に計上して総会の承認を受けることとなっており、利用分量配当を行うためには、事業別損益計算が実施されていることが必要で、ひとつの事業についての利用分量配当はその事業によって生じた利益の範囲内において、組合と組合員との取引の量に応じて事業の種類別に一定の率で分配することが必要です。
 なお、組合は利用分量配当金の支払にあたって源泉所得税を徴収する必要はなく、損金算入の取扱いを受けた部分は、支払を受けた法人組合員の側では益金に算入しなければならず、受取配当金の益金不算入の対象とすることはできません。
 ただし、組合において損金不算入となった当期以前の利益剰余金に係る利用分量配当金等の部分は、法人組合員においては一般の受取配当金とみなして益金不算入の対象とすることができます。
 組合員が個人事業者である場合は、組合が損金算入とした利用分量配当金は事業所得の収入金額となり、組合が損金不算入としたものは配当所得となります。
 組合によっては、剰余金の処分としないで割戻し等の名称で組合員に還元している例もあります。この場合、組合において、妥当な割戻し基準を定め、損金経理によって支出していれば、損金算入が認められます。

 


中小企業静岡(1997年 3月号 No.520)