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シリーズ「くみあい百景」

不易流行 伝統の技と心を伝え、いまに活かす

静岡漆器工業協同組合

住所:〒420-0067 静岡市葵区幸町10番地の6
理事長:新井吉雄
組合員:14人
設立:昭和35年2月
TEL:054-253-8692
FAX:054-253-8698
URL:http://www.shizuoka-kougei.jp/015.html

 

450年の歴史

巻貝が埋め込まれた布目小物入れ(左)と木目の美し い多角盆(右)

静岡市の伝統工芸品である「駿河漆器」。その歴史は古く、今川時代に始まるといわれている。

その後、江戸時代。3代将軍・徳川家光が、静岡浅間神社の造営にあたり、全国から招いた漆工が、神社竣工後も静岡に永住し、技法を伝えたことで、駿河漆器の基礎が築かれたと伝えられる。以後、静岡の地場産業として発展を遂げてきた。

漆器は、漆(うるし)の木から採取した樹液を精製し、塗料にしたものを、幾重にも手作業で塗り重ねて、作られたものである。

熱に強く、酸にもアルカリにも侵されにくい、強靭な塗膜で覆われており、丁寧に塗り上げられた漆器の深みと趣のある美しさは、化学塗料では、とても表現できないものである。

漆器の塗料となる漆自体は、現在、約99%を中国からの輸入に頼っている。


年15回の共同販売

若い女性も多く訪れた、昨年9月の「ぬりものまつり」。

当組合は、この伝統の技法を受け継ぐ静岡市の漆職人により、昭和35年に設立された。

駿河漆器の特徴は、「変り塗り」にある。伝統技法を継承しながらも、常に新しい塗りを創作しつづけている。木目を生かした「木地呂塗り」、いろいろな工夫を凝らした「変り塗り」など、独特なデザインや技法を生み出してきた。

主な製品は、重箱・椀・花器・菓子器・アクセサリーなどである。

こうした努力と研究で作られた漆器は、組合の主力事業である共同販売事業で、全国各地に販売されている。共同販売の方法は、静岡駅構内の駿府楽市などで販売されるほか、毎年、15回ほど県内外の展示会に出展している。

「これまでは問屋さんを通じた販売が大半。直接販売で利益率が向上するとともに、消費者と接することでニーズが感じとれ、次の製品づくりに生かすこともできる」。新井理事長は、共同販売事業の効果を語る。

組合は、他の伝統工芸品組織と連携を取りながら、展示会に参加するほか、組合独自のイベントも開催している。

平成元年から始まった“ ぬりものまつり”は、今年で20回目を迎える。静岡市の青葉イベント広場を会場に、漆塗り体験や漆器修理の相談会などを行い、昨年度は2日間で約4千人を集めた。

「消費者に生産者の顔や存在を示すことで、漆器の良さや安心を伝えることができる。職人側もイベントを通じ、やりがい・いきがい・使命感を得ることができる」と理事長は強調する。今年は、10月4、5日に開催を計画している。


地域ブランドに認定

「お客さんの喜びが、やりがい・使命感につながる」と新井理事長。

平成18年度から、「地域団体商標(地域ブランド)制度」が導入された。同制度は、地域ブランドを適切に保護することにより、事業者の信用維持を図り、地域経済活性化の支援がねらい。これまで難しかった「地域名」と「商品名」からなる商標登録が、一定の条件を満たす組合などの団体に、認められようになった。

「駿河漆器」は、静岡市などの協力により、平成19年、特許庁に認定登録された。県内では、「駿河湾桜えび」「川根茶」「静岡茶」「沼津ひもの」「掛川茶」など、10件が登録されている。

「地域ブランドで知名度が増すようになった。その名に恥じない高い水準の製品づくりが、今まで以上に求められる」と理事長は、気を引き締める。


不易流行

6ヵ月にわたり、毎週開催される技術保存講習会。

地域ブランドで知名度が増すことで、若い世代が漆器づくりに興味を持ち始めてきた。

「漆の世界は奥深い。将来に繋げるためにも後継者育成が急務。静岡市の援助で技術保存講習会などを積極的に行い後継者育成に力を注いでいる。ベテランと若手職人とが切磋琢磨し、新しい提案がたくさん出てきてほしい」と理事長は期待を寄せる。

「不易流行」(ふえきりゅうこう)。松尾芭蕉が「奥の細道」の旅で体得した概念である。

組合は、この「不易流行」をコンセプトに掲げ、「伝統の技と心を伝え、いまに活かす」姿勢を貫き、時代が求める漆器づくりに取り組んでいる。