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クローズアップインタビュー

組合が環境大臣表彰を受賞
“貴重な資源”温泉の保護と有効活用を訴える

伊豆長岡温泉事業協同組合
牧野榮夫理事長

「温泉は、蛇口をひねれば出てくる温かい水、ではなくて、貴重な地下資源なんですよ」。

理事長を務める伊豆長岡温泉事業協組が、温泉の資源保護と適正利用に大きく寄与した功績から、7月、環境大臣表彰を受賞した。

100近い温泉旅館を束ねるトップとして、郷土の尊い資源の保護を強く訴え続ける。

昭和40年代、伊豆長岡温泉では、掘削井戸の増加などにより、ピーク時には90近い源泉が乱立。激しい揚湯競争の結果、水位が大幅に低下した。

「このままでは遠からず温泉は枯渇しますよ、と専門家から宣告され、揚湯量と泉温の確保のため組合をつくり、温泉の集中管理システムを導入した。待ったなしの状況だった」と当時を振り返る。

組合による温泉の集中管理は、青森県浅虫温泉に次ぎ、全国で2番目。温泉街全体を1本の管でつなぐ「源泉分湯方式」は初の試みだ。

誘客宣伝事業を主事業とする伊豆長岡温泉旅館協組理事長や観光協会会長などの要職を歴任し、平成17年、理事長に推された。就任の年、それまで4半世紀以上稼動した集中管理システムを一新した。

「施設の老朽化が進んでいたし、なによりも、余ったお湯は捨てる、がいわば常識。揚湯量や水温は各旅館の勘頼りで、ムダが多かった」。

このムダを省くため導入したのが、最先端の自動監視管理システム。コンピュータが24時間、揚湯量や配湯量を監視し、効率的な集中管理を実現した。さらにエアーリフト方式から水中ポンプ方式に切り替えたことで、源泉の集約も可能となった。

「この3月、全てのシステム導入が終わりました。10年前に比べ、電気料金は半分。捨てるお湯の量も大幅に減った。コスト削減も目的のひとつですが、温泉は地域の社会経済の大きな基盤。限りある資源の保全や有効利用を通じ、“日本一美しい地域づくり”を目指した活動を続けていくことが組合の大きな役割」。

明治41年創業の「さかや」の3代目。温泉街ができる前から旅館業を営む長岡地区随一の老舗だ。

「元々は造り酒屋。だから、屋号は“さかや”。酒づくりのため、良い水を求め、地面を掘ったら温泉が出たので、祖父が旅館を始めたんです」。

こどもの頃から、家業を継ぐものだと思っていた、という。

「母の“洗脳”のおかげ」と笑う。

少年時代、詰め将棋に魅了された。

「何十手、場合によっては100手以上も先を読む奥の深さは、始めて60年以上経ったいまも極められないね」。