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シリーズ「くみあい百景」

「新月伐採」「葉枯らし乾燥」 自然との調和で販売力強化

天竜T.S.ドライシステム協同組合

住所:〒431-4101 浜松市天竜区水窪町奥領家3818番地の11
理事長:森 秋男
組合員:7人
設立:平成18年6月
TEL:053-987-2864
FAX:053-987-2878
URL:http://www.ts-dry.com

 

組合設立でブランド化を推進

引き継いだ製材工場。天然乾燥される木材が所狭しと並ぶ。

旧磐田郡水窪町(平成17年に合併により浜松市天竜区水窪町)。静岡県の西北端に位置し、豊な緑に囲まれ、古くから林業が代表的な基幹産業の町である。特に、天竜川流域の森林は、「天竜美林」と称され、吉野美林(奈良県)、尾鷲美林(三重県)とともに日本三大人工美林に数えられている。

当組合は、水窪町の天竜美林の良さを最大限に引き出し、さらなるブランド化を図るため任意組織である「T.S.ドライグループ」が母体となり、平成19年6月に設立された。名称のTは「天竜」、Sは「杉」、ドライは「天然乾燥材」を意味している。

組合は設立後まもなく、経営難に陥っていた第三セクターの製材工場である「フォレストみさくぼ」の施設と従業員を引き継ぎ、事業活動を展開している。

「同施設は切り出した木材を地元で加工できるため、運送費削減などの面から地元では有益な施設である。引き継いだ施設を軌道に乗せるためにも、組合が先頭に立ち、積極的な事業展開を図っていきたい」と森理事長は、組合活動に対する意欲を語る。


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徹底したこだわりの「TSドライ」

履歴管理のために、1本1本の木材にバーコードが打たれる。

左から森下理事、榊原理事、森理事長、鈴木理事。

上は、満月期に伐採された木材。下は、新月伐採された木材。

現在、国産材は外国産材との価格競争などで慢性的に相場が低迷している。その結果、山主に十分な利益を還元できず、森林の荒廃が深刻な問題となっている。

「良質な天竜材を供給するためには、山主が意欲をもって森林管理に取り組む体制が不可欠。木材に付加価値をつけ販売力強化を図り、山主に利益を還元していきたい」。森下理事は、その意義を語る。

組合は、「TSドライ」というブランドを立ち上げ、天竜材に徹底したこだわりを付与し製品化・流通させている。

こだわりの第一は、天竜川流域以外の木や樹齢50年未満の木は扱わないこと。第二は、伐採した木材は「葉枯らし乾燥」と言い、枝葉をつけたまま山林で3ヶ月以上自然乾燥させ、製材後も6ヶ月以上にわたり天然乾燥を行っていることである。

「通常、葉枯らし乾燥はあまり行われない。製材後も効率を優先して機械によるが人工乾燥が多く利用される。約1年の歳月をかけゆっくりと天然乾燥することで、木に与えるストレスは少なく住む人に心地よい香りや色・艶のある木材を供給できる」と榊原理事は、その効果を語る。第三は、出荷する1本1本の木材に出荷証明書を発行するなど、生産履歴管理(トレーサビリティ)を押し進めていることである。(特許出願済)

「木材の履歴管理は全国的にも先進的な取組みである。樹齢・生産者・伐採日などを明確にすることで、消費者へ顔の見える木材の提供が可能となる」。鈴木理事は、信頼確保への取組みを語る。

第四は、月のサイクルに合わせて伐採時期を限定する「新月伐採」を行っていることである。

新月伐採の木材は、でんぷんが少ないため、「カビにくい」「虫がつきにくい」「割れにくい」など、良質な木材になると言われている。組合はこの木材を「新月の木」と銘打ち販売している。

「新月伐採は科学的にまだ解明されていないが、幾つかの実験からその利点は確認されている。さらに消費者が納得するデータを集め認知度を高めていきたい」と榊原理事は、期待をこめる。


自然と調和のとれた木材を

地球温暖化問題は、国際社会の最優先課題のひとつでる。その要因である二酸化炭素の吸収に森林の果たす役割は大きい。組合では「与作ツアー」と称し、市民が森林にふれる機会を設けている。

「昨年、全国から約500人の参加があった。雄大な森林に触れ林業を身近に感じてもらいたい。有害な化学物質が溢れるなか、自然と調和のとれた木材の利用を組合活動で提唱し発展させていきたいと考えている」。森理事長は、組合活動への期待を熱く語った。