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視点・指導員の現場から

団塊世代の大量退職による技能・技術の伝承は

団塊世代の大量退職

わが国は2007年から団塊の世代が大量に定年を迎え、中小企業の労働環境にも大きな影響を与えることになる。
こうした中、高年齢者等雇用安定法が改正され、昨年4月より段階的に65歳までの高年齢者確保措置の実施が事業主に義務付けられた。しかし、その対応には苦慮する事業主も多いのではないか。
また、重要なことは、団塊世代の大量退職が労働力の供給面だけにとどまらず、技能や技術の伝承など労働の質的面への影響が懸念される点だ。特に製造業においては技能・技術の衰退・喪失に直結する可能性が高まっている。また、自動化による技術のブラックボックス化や開発期間の短縮に伴い、おのずと教育時間も節減される。このため「技能者」育成ニーズが増加したり、多品種少量生産への移行により、「多能工」の育成ニーズが増えているようだ。
そうした折、ある中小企業のソースメーカーから相談があった。技術者の高齢化が進み、以前から技能伝承の必要性を感じ、担当者を決めて準備させていたが、遅々として進まないとのことだった。

e―技伝承サービス事業

そこで、この企業に(株)浜名湖国際頭脳センターがおこなう〔e―技伝承サービス事業〕を紹介した。
以下では、その事業内容について触れてみることにする。同事業は、仕事と教育を結び付けるシステムとして東京農工大の森和夫教授らが開発した方式を取り入れたものだ。技術伝承は、現場技能の洗い出しがベースであるとし、分析しようとする作業をよく知る人が書き出した能力カードをもとに小集団による妥当性の高い内容に洗練させていく方法である。その成果はマニュアルや教材のみならず、技能訓練計画や目標管理、人材配置など幅広く活用できるという。
具体的には次の5つのステップに沿って進められる。第一が、現状技術・技能の洗い出し作業である。第二に個人別技能評価表を使用しての技術・技能分析と教育計画の作成。第三として訓練用技能分析表、作業手順書を使用しての教育用デジタル教材の開発。第四に教育計画、デジタル教材を使用しての教育訓練の実施。5つ目が個人技能評価表を使用しての結果評価、今後のフォローアップを行なっていく。
なお、生産現場の技術・技能を伝承するための成功要因は、
1.伝承すべき技術・技能内容が適切に選定されていること
2.指導者が指導に関する必要事項を習得していること
3.技術・技能を伝承できるよう分析的に整理していること
4.指導方法がその技術・技能を伝えることに最適であること
5.伝承計画があり、確実な評価によって伝達度が分かること
―などである。
有料ではあるが、技能の伝承についてのお悩みの方は、頭脳センターに相談してみるのも一考である。(鈴木良)