寄稿

平成18年度税制改正と中小企業等への影響

法人税関係

3.交際費等

交際費課税の議論は企業税務にとっては、欠かすことのできない重要な一角を占めているといえます。何回かの改正が時代とともにありましたが、今回の見直しは飲食費の一人あたりの支出額が少額である場合には、交際費の損金不算入額限度額計算から除外して計算するという、具体的な少額の金額と内容が明示されたことです。

一人あたりの飲食等の支出額は時代と共に貨幣価値も変遷しており、地域性もあってその判断ができにくいことが実際ですが、今回の明示は5000円以下で、支出内容等の要件が具体的に呈示されており、内容的にはより厳格な条件が課されたものと思われます。

現行の交際費課税制度は、期末資本金等の額が1億円以下か超かによって二区分され、1億円超の会社の支出交際費については全額損金不算入とされています。1億円以下の中小事業者の場合には、400万円を超す部分は全額損金不算入、400万円以下の場合は90%までの損金不算入額が認められています。

4.少額減価償却資産の償却費

平成18年3月31日までの時限立法で、30万円未満の少額減価償却資産の即時償却が一定要件のもとに認められていましたが、期限延長されるとともに、年度の対象少額償却資産の支出額が300万円以下という歯止めがかかることとなりました。

5.情報基盤強化税制

IT投資有価証券促進税制として一定の情報通信機器等を取得した場合に適用されていた初年度特別償却と税額控除の選択適用制度が期限到来で廃止されました。それに代わり情報セキュリティ対策として一定要件に該当する設備等を取得し、事業の用に供した場合には基準取得価額の10%相当額の税額控除と50%相当額の特別償却の選択適用ができることとなりました。

6.研究開発税制

試験研究費のうち比較試験研究費を上回る部分の特別税額控除割合5%の追加控除が認められることとなりました。

7.中小企業者等の留保金課税の特例

個人所得税における稼得所得の場合の累進税率との公平観点から、同族会社が一定額以上の所得を留保した場合には本税とは別に追加課税される制度です。

今年度の改正により同族会社であるか否かの判定にあたって、従来の3株主グループから一株主グループによる判定となりました。また留保所得控除については、次の4つのうちで最も多い金額が控除額とされることとなりました。

1.所得金額の40%相当額、資本金額が1億円以下の中小法人の場合は50%相当額。

2.年2000万円(現行1500万円)

3.利益積立金額が資本の額の25%に満たない場合におけるその満たない部分に相当する金額

4.中小法人において自己資本比率が30%に満たない場合におけるその満たない部分に相当する金額(新設)

経営革新承認企業は、18年4月1日から平成20年3月31日の間に開始する事業年度については留保金課税は停止される。

8.欠損金の繰り戻し還付 

青色申告書提出法人が生じた欠損金額の繰り戻し還付請求は適用が停止されていますが更に2年間停止が延長される。創業5年以内の中小事業者は、適用が除外されていますが、これについても2年間延長。

9.その他新会社法関連 

1.剰余金の配当はその原資の区分に応じ配当と資本の払い戻しとして取り扱われますが、現行との変化はありません。

2.種類株式発行会社のみなし配当の計算については、その株式の種類ごとに区分された資本等の金額とされています。

3.法人が自己株式を取得した場合には資本等の金額を減少させて表示されることになりました。

4.同族会社の判定基準に議決権等を加えることとなりました。

5.役員の範囲に新たに会計参与を加えることとなりました。

個人所得税関係

1.定率減税廃止

消費刺激とデフレ回避対策として、平成11年から導入されていた個人所得税の定率減税については、17年度では2分の1に縮減され、今回の改正により廃止されることとなりました。

当初の制度に比し所得税と住民税の負担は最大で一人29万円となっています。