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富士の叫び

進む少子高齢社会 10年後を見越した雇用の一手を

日本人の平均寿命は、男女ともに5年連続で過去最高を更新した。男性78.64歳、女性85.59歳で、とくに女性は20年連続で世界一の長寿となった。総人口に占める65歳以上の高齢者割合は、50年には37.7%とも推定され、超高齢社会の到来はもはや時間の問題である。

こうした中、4月1日から改正高年齢者雇用安定法が施行された。これにより事業主は、「定年の引き上げ」や「継続雇用制度の導入」、または「定年の定めの廃止」により、年金支給開始時期までの雇用確保を義務付けられることになった。中小企業でも準備期間を含め、段階的に雇用年齢をアップし、平成25年度からは65歳まで希望者全員を雇用する措置を講じる必要がある

従来から多くの中小企業は、必要な人材は定年後も引き続き職場にとどまることを求めてきた。例えば雇用実態調査によれば、86%の企業で継続雇用制度を採用しているという。また、この数年間は、経済・社会構造の大変革の中、若年者の正規雇用を手控える一方、即戦力として定年齢到達者の再雇用等で、あるいは仕事の多寡に合わせた人材派遣や短時間労働者などで、雇用調整を進めてきた。その結果、企業内の年齢構成はバランスを欠き、ある年代から数年間は人材がすっぽり抜けるという人事上の空洞化も見られ、これを懸念する経営者も多い。この影響がどのように出てくるのか、心配されるところでもある。

併せて、少子化の流れも忘れてはならない。静岡県が発表した数字によると、驚くことに本県では2030年に、およそ44万人の人口が減少すると予測されている。この数は、実に沼津市の人口20万7千人と富士市の23万7千人を合わせた人数に匹敵する。

すでに一部の大手企業では、きたるべき将来の人手不足を見越した雇用拡大が始まっている。企業経営とは、人の活用である。それも10年後を見越した対応が必要だ。キーワードは「高齢者」と「若者」「女性」。それに「ワークシェア」か。自社の経営スタイルを見直し、新たな飛躍へのステップとなることを期待したい。

静岡県中小企業団体中央会・会長 井上 光一