小泉内閣の行政改革の目玉として、特殊法人等の改革が動き出した。そのなかで、特に組合と関係の深い商工中金の民営化論が大きな焦点となってきている。
商工中金の民営化とは、どういうことか一言でいえば、政府が保有している出資金(四千億円)を引きあげることの一点につきる。それによって商工中金にどのような影響が出るかといえば、自己資本比率が三%まで低下し、金融機関の生命線の信用格付けが急落し、十段階のうち下から二番目のランクにまで落ち込んでしまうことにある。
同時に政府出資の銀行というお墨付きを失うことにもなり、資金の八割をワリショーなどの債券に依存しているので、その悪影響は甚大である。事実、新聞報道という風評だけで調達金利が上昇し、自民党の商工部会でもこのことを憂慮する意見が相次いだという。万一にもこの改革(改悪)が実施されることになれば、商工中金にとっては存続をかけた緊急事態といわなければならない。
五年ほど前にも、民営化の議論がなされたが、その直後に民間銀行の「貸し渋り」が大問題となり、商工中金が政府系金融機関なるがゆえに政策金融機関として、大きな役割を果たしたことは、記憶に新しいところである。
このことに関連して、本会の副会長で清水工業団地協組の梶本理事長は「あの時、メーンバンクから融資を断られたS工業を救ったのは商工中金だ」と断言してはばからない。
私は商工中金と関わってから四〇年以上になるが、この間、オイルショックをはじめ、大きな景気変動のなかで、その都度商工中金が政策金融機関として、また、民間金融機関の補完的役割を果たしつつ、長期かつ良質の金融に徹してきた姿を、この目で確かに見定めてきた。その経験からして中小企業と組合にとって、商工中金の民営化は断じて許してはならないと覚悟している。
小泉首相は、必ずや “正域ある改革”を見極めてくれるものと期待している。
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