夢の実現に向けて
主婦六人がスクラム
今年一月。東部地区で、久しぶりに企業組合が誕生した。名称は企業組合イルカ。出資総額は一八○万円である。
組合ではクッキーやケーキ、パンあるいは農産物を活用した食品の製造と販売を主な事業としている。
設立の目的は、発起人となった沼津市の主婦六名による起業化と就業の場の確保であるが、もう一つ大きな理由があった。
発起人である六人の主婦にはそれぞれ軽い知的障害を持つ子供たちがいる。
その子供たちが、学生から社会人になろうとする時、「就業」ということに少なからず問題の発生が予測されていた。
よく耳にする「社会福祉法人」といった組織に、障害を持つ人々が就業の場を求めることが多いが、その数は満足できる状況ではなく、就業のチャンスをつかむ事が難しくなっているのが実状である。
こうしたことから、母親が中心となり、学生のうちから夏休みなどの長期休暇を活用し、少しずつ仕事を覚えさせ、卒業と同時に企業組合で就業させる事を目的としていた。
組合の名称の由来は、知的障害者に有効といわれている「イルカセラピー」やイルカの持つ「優しさ・かわいらしさ」のイメージもあるが、もう一つ、子供たちが将来組合に就業した際に、全員が問題なく発音できる「・イ・ル・カ」とした。
シミュレーションによる自信
当組合は、約二年前から任意グループとして、自己資金や中央会の補助事業を活用し、先進事例の視察研修や、組合事業の中心となるクッキー・ケーキといった食品製造手法を学ぶため、専門家による指導を幾度となく受け、技術取得を行ってきた。
しかし、これまでケーキやクッキーを焼いて、社会福祉イベントやバザーといった場面で販売してきたものの、本当の意味での「商売」の経験はない。
そこで、組合設立後の就業体制・稼働時間や原価計算・営業といった企業経営に関する不安を取り除くため、組合員全員で実態を想定した約半年間のシミュレーションを行い、その可能性を検討してきた。
この間に、主婦の立場からプロとしての自覚が生まれ、技術取得による商品も完成し、さらに、口コミによって顧客の確保にもつながった。
いよいよ本番
すでに、予約販売は始まっているが、四月十六日、主力商品となるクッキーやクルミ等を使ったパウンドケーキを用意して、活動の拠点となる沼津市北今沢の組合施設においてオープンし、本格稼動に突入していく。
今、インターネットの普及によるSOHO(スモールオフィース・ホームオフィース)やリタイヤした技術者等に「企業組合」が注目されているが、これからの福祉社会といった観点からも企業組合は大きな存在価値となっていくのではないだろうか。
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