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「税 務」

「平成10年度税制改正と組合への影響」
税率引き下げの反面、引当金の縮減も

 
公認会計士
青 木 隆 知
 静岡市沓谷6-17-1
 パナハイツ沓谷101
TEL 054-264-6530

■平成十年度税制改正の主な改正事項について解説して下さい。
 また、この中で、協同組合等の軽減税率も引き下げられたと聞きますが、協同組合等への影響も併せて教えて下さい。



 平成十年四月一日より、平成十年度の税制改正が施行されました。
 今回の改正は、所得税の特別減税実施、金融土地税制の改正、国税帳簿書類の保存方法等の創設と共に法人税の改正が行われました。特に法人税改正については、協同組合等の日常業務に密接に関係した改正が盛り込まれており、事務処理上も申告上も注意が必要となっております。
 法人税については基本税率引き下げとともに、課税ベースの拡大という名目で、減価償却や引当金、経費関係などの項目についての見直しが行われました。

(一)税率の改正
 税率の改正については平成十年四月一日以後開始する事業年度から適用。
            (現行)  (改正後)
普通法人の税率     三七・五% 三四・五%
中小法人の軽減税率   二八・〇% 二五・〇%
協同組合等の軽減税率  二七・〇% 二五・〇%

 協同組合等は従来、その性格等から他法人に比し税率が軽減されていましたが、中小法人等の軽減税率と同率になりました。
 法人税の税率改正に伴って、事業税の税率も改正されました。

●特別法人(協同組合等含む)の標準税率
(現 行)
 年三五〇万円以下の所得         六・〇%
 年三五〇万円超の所得及び清算所得    八・〇%
(改正後)
 年四〇〇万円以下の所得         五・六%
 年四〇〇万円超の所得及び清算所得    七・五%

●その他の法人の標準税率
(現 行)
 三五〇万円以下の所得          六・〇%
 年三五〇万円超七〇〇万円以下の所得   九・〇%
 年七〇〇万円超の所得及び清算所得   十二・〇%
(改正後)
 年四〇〇万円以下の所得         五・六%
 年四〇〇万円超八〇〇万円以下の所得   八・四%
 年八〇〇万円超の所得及び清算所得   十一・〇%

(二)法人税改正の主要項目
 課税ベースの拡大による法人税関係の改正点で、協同組合等にとっても関係があると思われる主要なものは、次のような項目です。

 一、貸倒引当金      二、賞与引当金
 三、退職給与引当金    四、減価償却
 五、交際費        六、帳簿書類の電子データ保存制度の創設等

■引当金は縮減・廃止の方向へ

 
 引当金関係は原則として、段階的縮減、廃止の方向で改正されています。
 貸倒引当金については、平成十年度から、十四年度までは、実績繰入率と法定繰入率の選択が認められています。中小企業の特例制度の対象法人については、租税特別措置として現行の法定繰入率が存置されており、その適用期限が三年延長されました。
 賞与引当金制度は、平成十年度から十四年度までの間は経過措置として、順次繰入限度額が縮少された後廃止されます。決算賞与を出した場合、事業年度末までに支給する賞与の額が受給者に通知され、その後一カ月以内に支払われるものであれば、未払費用として損金算入が認められることになりました。
 退職給与引当金の累積限度額は現行では、期末要支給額の一〇〇分の四〇ですが、一〇〇分の二〇に引き下げられました。これも平成十四年度まで経過措置があり、順次割合が引き下げられています。
 減価償却制度の改正の影響は非常に大きいと思われます。まず平成十年四月一日以後取得する建物については、耐用年数を短縮し、最長五〇年を限度とするかわりに、償却方法は定額法のみとされました。
 少額の減価償却資産の取得価額基準が二〇万円未満から十万円未満に引き下げられ、十万円以上二〇万円未満の資産については、事業年度ごとに一括して三年間で償却できる方法を選択できることになりました。平成十年四月一日開始事業年度以後の法人が事業の用に供した時から適用されます。
 機械装置等に認められていた初年度二分の一簡便償却制度は平成十年四月一日以後開始事業年度より廃止、営業権の償却は任意償却から五年間均等償却に改められました。
 次に中小企業の交際費について、平成十年四月一日以後に開始する事業年度より定額控除枠内の損金不算入割合が現行の一〇〇分の一〇から一〇〇分の二〇に引き上げられたことも見逃せない改正の一つです。

 以上のように協同組合等の経理処理や申告に関しては、相当影響がありますので、計画的で、しかも日頃の事務処理をきちんと整理しておくことがより一層望まれます。


中小企業静岡(1998年 5月号 No.534)