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 平成9年度組合設立白書 
異業種の市場開拓型組合が急伸

組合プロフィールもあわせてご参照下さい。

 茶夢ファクトリー、アントレ、ぞうさん、浜名湖えるだークラブ……。
 さて、これは何の名前でしょうか?
 こんなクイズのできそうな名の組合がズラリと並ぶ。別に組合の名称に関する県の認可基準が緩和されてきたからではない。 そこには、小人数、異業種、共同受注、研究開発といったメンバー、業種、目的の変遷と昨年度の設立組合の特徴が見え隠れしている。
 今回の特集では、平成九年度設立組合の全組合を紹介するとともに、この十年間の動きと比較しながら昨年度の傾向を探ってみた。



 平成九年度の設立は、三一件。企業組合が二件、他は全て協同組合である。
 全国的な設立件数の変遷を見ると、昭和五〇年代には、年あたり千組合(一県平均二一〜二二組合)を越えていたが、六〇年代初めには八〇〇台に低迷。平成にはいり、一時持ち直したものの平均的には、九〇〇件前後にとどまっている。
 県内においては、昭和五〇年代からほぼ三〇件台で推移し、この十年の平均は三三組合となっている。そうした意味では、平均的な件数ではあるが、その内容は、時代の要請を受け、大きく様変わりしている。

異業種構成の共同受注組合が増加

 この十年、実に様々な組合が設立された。かつては主流であった業界代表組合、共同購入、金融事業等に対する大きな流れの一つは、建設業関連業種を中心とした共同受注事業の進展であり、一つは昭和六三年に誕生した融合化法に基づく異業種による研究開発型組合の設立などであった。
 それぞれの流れは今だ引き継がれているものの、昨年度、更に際立ったのは異業種構成による共同受注・販売事業を目指した組合の増加である。
 共同受注・販売事業とも新規市場・顧客の開拓という意味では、同系列の事業といえるが、その中心は建設業関連業種にとどまらず、広範囲な業種に及んだ。共同受注・販売をメイン事業として実施する十組合のうち、五組合が異業種で構成されている。
 その内容をみると、自然環境復元(ビオトープ)に関するコンサルティング業務や地震防災工事の共同受注、健康住宅や定期借地権付建物の受注斡旋など長引く景気低迷のなかで、異分野のお互いの技術とノウハウを持ち寄りながら何とか新しい分野や顧客の開拓、またはシステム的な仕事を獲得していこうとする姿勢が伺われた。このような動きは、数年前から注目されてはいたが、徐々に主役の階段を登り始めている。
 なお、研究開発をメインとする異業種組合は六組合。うち五組合が融合化認定組合。 これらも将来を見据えた、研究開発品による新市場開拓のための前段階との解釈も成り立つわけで、同業種による共同受注組合も加えると、広い意味では、新設組合の三分の二は新市場開拓型組合であると言ってしまったら少し強引だろうか。

■組合設立件数の推移                       単位:組合
年度 62 63 平成元 2 3 4 5 6 7 8 9
静岡県 34 37 40 30 32 34 35 26 37 31 31
全国 815 845 852 848 942 1,003 970 898 903 863 -
(17) (18) (18) (18) (20) (21) (20) (19) (19) (18) (-)
 資料:全国中央会「平成9年度版 中小企業組合の設立動向」より( )内数値は
    1都道府県あたりの設立件数


組合の夢とCI戦略も

 さて、これら設立件数の中で重要な位置を占めるようになった異業種組合・共同受注組合に共通している点がいくつかある。 いずれも少人数、小資本、そして新しい”もの”を作り出そうとする、または新しい”市場”を獲得しようとする夢とCI戦略を兼ねたネーミングもその一つである。 先にあげた「茶夢ファクトリー」は新しい茶仕上げシステムの研究グループ。「アントレ」は無駄なオカラの出ない”大豆丸ごと豆腐”の研究。
 「茶夢ファクトリー」は読んで字のごとし。「アントレ」は”起業”といった意味のフランス語。ほか、アール・ティ・ビー、トムハウス、アルファ開発などの内容は後段に掲載の組合プロフィールを参考にしていただきたい。

キイワードは環境・リサイクル、自然派指向などの社会的ニーズ

 では「ぞうさん」、「浜名湖えるだークラブ」は?
 正解は、「ぞうさん」は障害者・健常者の共働事業所。手作りパンの製造・販売を中心に展開している。「浜名湖えるだークラブ」は第一線を退いた専門職OBによるコンサルタント集団。いずれも企業組合であり、福祉・高齢化といった問題も絡む。
 このように、設立の背景を社会的ニーズの側面から見ると、また別のキイワードが浮かんでくる。
 静岡市建設発生土処理(協)、富士クリーン開発事業(協)、静岡県東部建設残土
再生事業(協)は、建設残土・廃棄物の処理事業を実施。同種の組合は、毎年二〜三組合がコンスタントに設立されるようになった。
 ”環境・リサイクル”というキイワードで捕えれば、静岡県ビオトープ事業(協)、静清古紙再生促進事業(協)もこの枠組にはいる。そのほか、
”自然派指向商品の提供”
 静岡茶生産販売(協)、トムハウス(協)、 浜松高品質食鳥肉(協)
”衛生管理の強化”…特にO-157 事件以後
 静岡牛乳(協)、(協)焼津共同冷蔵、(協)水産パークヤイヅ
など、種々のキイワードが考えられる。当然、一組合にいくつかのキイワードが潜んでいる。と同時に、一つのキイワードが中小企業に市場開拓のチャンスを与える面と、対応を迫り、より危機感を募らせる面を併せ持つ。特に”法の施行・改正”は多大な影響を持つ。
 かつての融合化法、官公需適格組合制度、前払式証票の規制等に関する法律、各種環境・リサイクル関連法などの法律や制度が新たな組合の設立を促したのは、何度も経験している事ではある。
 しかし、中小企業は構造変革期という大きな枠組みの中で、今まで以上のスピードで次々と生まれてくる、新たな社会ニーズや法・制度への対応を迫られていくだろう。
 その都度、組合は新たな形を模索しながら守備と攻めの両面で中小企業の活力を支えていくものと思われる。


中小企業静岡(1998年 5月号 No.534)