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増田 雅一 

協同組合しずおか匠の会
増田あいぜん工房
 

伝統の技と現代感覚で
藍染め作りに取り組む
 異業種の伝統工芸職人によって平成八年三月に設立された協同組合しずおか匠の会。その組合員である増田あいぜん工房の後継者、増田雅一氏にお話を伺った。
 増田氏は、奈良時代から伝わる藍染めの技法を継承する一方、パソコンを使ったデザインを取り入れた作品も手掛けるなど、現代感覚にあふれた商品作りに取り組んでいる。
 昭和三一年十月生れ。

県内で最も若い藍染め職人

―藍染めというのはどのような技法ですか。
増田 藍の葉を加工した染料で布などを染めるものです。型紙作りや何度も重ねる染め上げなど細かな作業が多く、経験と技術が必要です。県内に同業者は数件しかなく、私が一番若い職人です。
―どんな商品がありますか。
増田 のれんやテーブルクロスのほか、ポーチやハンカチ、ペンケースなどの小物類も作っています。
―若い方向けの商品も多いようですが、そのために心掛けていることはありますか。
増田 デザインなどに現代感覚を取り入れることですね。技術的には古くても、商品は新しいものでなければと考えています。それと値段が手頃なものを作ることです。
―パソコンを使って藍染めのデザインをされることもあるようですね。
増田 四年ほど前、ツインメッセ静岡の応接室のパネルを依頼された時に、コンピュータで画像処理をしようと考えたのがきっかけです。三カ月ほど独学でパソコンを勉強して作品を作りました。それ以来、仕事の中で使う機会も増えました。
―藍染め作りの中で一番意識されることは何ですか。
増田 年月が経っても色あせない商品を作ることです。これが一番難しいんですが、商品をお客さんに長年愛用していただけたら嬉しいですね。

奈良時代から伝わる藍染めの技法
藍染めもホームページも
きめ細かくていねいに


―ところで、昨年度には中央会が行った中小企業情報創造発信強化支援事業にご参加いただき、工房のホームページをご自身で作られましたね。
増田 去年の十月に、中央会でインターネットの事業を始めるという話を聞き、自分で作ってみようと思ったんです。それまでインターネットの経験はありませんでした。
―ホームページ作りにはどのくらい時間がかかりましたか。
増田 実際に作り始めたのは一月下旬から。三週間ほどかけて作り、二月中旬に公開しました。
―苦労された点はどこですか。
増田 作ること自体はそれほど難しくないんですが、載せる内容を考えるのが大変でしたね。最初は工房の紹介など三項目だけでとにかくスタートしました。その後三〜四日に一度手直ししたり、新しい内容を追加して、今では十項目以上になっています。
―藍染めとホームページ作りの共通点は。
増田 ていねいにきめ細かく作らなければならないところですね。ひとりよがりにならないようにしないと利用してもらえません。逆に違うところは、藍染めは長年の経験を活かした手作業の感覚で仕事をするのに対して、ホームページは相手が機械なのでカンでは動かせないことです。
―ホームページ作りの魅力は何ですか。
増田 多くの方に藍染めのことを知っていただくチャンスがあることですね。先日もホームページをご覧になった方が千葉県から工房を訪ねてきてくれました。
今後、組合や工房のホームページをどのように運営していこうとお考えですか。
増田 伝統工芸の良さを知っていただく場として活用したいですね。そのためには常に新しい情報を追加していかなければと考えています。

 パソコンやホームページ作りを始めたいきさつからも伺えるとおり、新しいことは何でも取り入れようとするタイプ。伝統産業を守る上で最も大切なのは、こうした姿勢なのかもしれない。

中小企業静岡(1998年 5月号 No.534)