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浜松酒販協同組合
新しい取引システムで売上アップ

全中会長表彰を受賞
 新年会など、何かとお酒を飲むことの多いこの季節。近所の酒屋さんのお世話になる機会が多い。
 しかし、中小酒店の経営環境は厳しく、通産省の商業統計によると、平成三年から六年の間に酒小売業者は十三%も減少している。
 こうした中、中小の酒小売業者で組織する組合ではさまざまな対策を講じ、生き残りを図っている。
 今回ご紹介する浜松酒販協同組合もその一つ。昭和四六年に設立され、四三五人が加入している。
 主な事業は共同購買事業。酒類や飲食料品を組合で仕入れて組合員に販売するなど、組合で卸売機能を担っている。
   昭和四七年に酒類販売業の免許を取得して以来この事業を行っており、大手メーカーとも契約。組合員の協力によって着実に実績を上げ、全国有数の酒販組合との評価も高い。
 設立から二五年。こうした活動が評価され、昨年十月の中小企業団体全国大会で優良組合表彰を受賞した。
 「長年地道にやってきたことが認められて嬉しい。これを組合員一人一人が誇りに思って、さらに立派な組合を目指していきたいですね」と山本理事長は喜びを語る。

組合員の協力で改革に成功
 組合にとって大きな転機となったのは平成七年。この年、共同購買事業の大改革を行った。
 それまでは、組合員からの注文は電話や御用聞きなどの営業で随時受け付け、配達も一日二回行っていた。一般の問屋を上回るきめ細かなサービスで好評だったという。
 また、配達時には値引きをせず、決算後の利用分量配当によって組合員に利益を配分する方式がとられていた。
 「この方法では組合の決算が終了しないと配当額が確定しません。各小売店での販売計画が立てにくい点が不評でした。また、受注や配送にかかる経費が大きいことも問題でした」(同)
 事実、酒類の`価格破壊aがマスコミ等で取り上げられるようになった六年度には、組合による売上高が対前年比八九%に落ち込んだ。
 そこで組合では七年度より事業の運営形態を大きく改革。新しい取引システムを打ち出した。
 新システムでは、受注業務の効率化と値引きの導入が大きな柱。
 組合員からの注文はFAXによる前日注文が原則。朝七時までに受注したものを一日一回配送し、七時以降の注文には手数料を徴収することにした。また、集金については銀行口座引き落としに変えた。これによって事務や営業、配送の合理化が図られ、経費は大幅に削減した。
 そしてこうした合理化の成果をもとに、組合員への卸価格の値引きを行うこととした。これまで年一回の配当のみであったものが、その都度値引きされるようになるため、組合員は販売計画が立てやすくなった。
 さらに、これまで徴収していなかった賦課金や手数料が導入され、共同事業を利用しない組合員にも組合運営費の一部負担を求めることとした。
 これら一連の改革が効を奏し、七年度の売上高は対前年比一三一%(これは値引き後の数字なので実質はこれを上回る実績となる)。
 「受注のためのサービスを省き、これまでにない賦課金を徴収するなど、組合にとっては大きな賭けでした。これだけうまくいったのは組合員が理解し、協力してくれたから。改めて組合員の結束の強さを感じました」(同)

地ビール開発にも取り組む
▲配達準備が行われる共同倉庫

 組合がもう一つ力を入れているのは組合独自のブランド商品の開発。現在、地ビールの開発に取り組んでいる。これが実現すれば、組合敷地内の工場から組合員の店舗に毎日配送されるため、朝作ったビールを夜、飲めることになる。地ビールは酵母が生きているため新鮮でおいしい半面、日持ちが悪いという欠点も補える。
 「手間がかかり、原価も高くなりますが、お客様に話題を提供することで、この地ビールが組合員とお客様とのパイプ役になってくれれば」と組合では期待を寄せている。
 長年の活動で培った結束力によって大改革を成功させた浜松酒販協同組合。これからも地域に密着して営業する組合員を地道に支援していく。
 

中小企業静岡(1997年 1月号 No.518)