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富士の叫び

人づくりを通じ、大競争時代到来に備えよ

「失われた10年」と喧伝される間に、我が国は大きな転換点を迎えている。人口減少社会の始まり、参議院の与野党逆転、身近な例では組合法の制定以来の大改正などが、そして私は、何よりも世界との関係の変化に驚かされる。

貿易立国日本の得意先は、戦後一貫して米国であったが、ここにきて中国が躍り出た。90年に我が国の輸出額の32%を占めていた米国が06年には23%に後退し、一方、2%に過ぎなかった中国は14%と急カーブを描いた。中国に台湾、香港などを加えた「大中華圏」では3割を、アジア全体でみれば5割に迫る。輸入でも、5%であった中国は21%に急進し、米国は12%へと半減するなど、その立場は完全に逆転した。

輸入食品を巡る遺憾な事件など大きな問題を抱えつつも、中国を中心とするアジア諸国との貿易は、いまや日本の生命線ともいえるほど重要さを増している。

長年、静岡県日中友好協議会の理事長として静岡県・浙江省友好提携25年の歴史に関わってきたものとして、またかつて中国要人に国の支えとなる中小企業の振興は、欠かせないと説いたことを昨日のように想い出し、感慨を禁じえない。

脅威ともいえる中国の躍進にどう対抗するか。日本の優位性を維持・発展させるためには、我々中小企業も生き残り戦略として、価格競争から、商品や技術、サービスの「質」で勝負することが求められるし、そのためには「人」という経営資源がモノを言うことになる。経営者や従業員の育成が企業の課題ともなれば、1社では荷が重い基礎体力強化である教育投資を、共同事業でコスト面でも解決しようという組合員の期待も高まるだろう。

人づくりはいつの時代でも最重要課題である。来年3月に迫る富士山静岡空港の開港は、海外への大きな扉を開き、そして大きな変化をもたらすはずだ。今こそ、我々は組合事業の大原則でもある教育事業の重要性を改めて強く認識し、来るべき大競争時代に備えるときなのである。

静岡県中小企業団体中央会・会長 井上 光一